勃然むっく)” の例文
うむとうなって、徳利を枕にごろんとなると、すべった徳利が勃然むっくと起き、弦光の頸窪ぼんのくぼはころんと辷って、畳のへりで頭を抱える。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一瞬時なりともこの苦悩この煩悶を解脱のがれようとつとめ、ややしばらくの間というものは身動もせず息気いきをも吐かず死人の如くに成っていたが、倏忽たちまち勃然むっく跳起はねおきて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と叫ぶ男あって二間丸太に論もなく両臑もろずねもろぎ倒せば、倒れてますます怒る清吉、たちまち勃然むっくと起きんとする襟元えりもとって、やいおれだわ、血迷うなこの馬鹿め
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
米友の横に振った棒を飛び退いてまた飛びついて、ワン! といったのは人間ではない、かなり大きな形をしている犬の声でしたから、米友は勃然むっくとしてはねおきました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)