助六すけろく)” の例文
しかし明治二十九年、歌舞伎座で団十郎が「助六すけろく」を出したときには、やはり彼のほかに意休いきゅうをつとめる俳優を求めることは出来なかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
じゃがさがはねて、助六すけろくが出るなど、江戸気分なもの、その頃のおもちゃにはなかなか暢気のんきなところがありました。
「鉢巻の江戸紫」に「いきなゆかり」を象徴する助六すけろくは「若い者、間近く寄つてしやつつらを拝み奉れ、やい」
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
花川戸はなかわど助六すけろく鼠小僧ねずみこぞう次郎吉じろきちも、或いはそうだったのかも知れませんね。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
助六すけろくに作り雷門前地内にて往来にむしろを敷きほんの手すさびに「これは雷門の定見世花川戸はなかわどの助六飛んだりはねたり」と団十郎の声色こわいろを真似て売りをりし由にて、傘の飛ぶのが面白く評判となり
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
浴衣ゆかたの腕をまくり、その頃はまだ珍らしい腕輪を見せ、やや長めの断髪の下から、水入りの助六すけろく(九代目市川団十郎歌舞伎十八番)のような鉢巻はちまき手拭てぬぐいでして、四辺あたりをすこしもはばからなかった。
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
助六すけろくならいうところである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
明治二十八年から二十九年にわたって、歌舞伎十八番の「しばらく」と「助六すけろく」とが歌舞伎座で上演された。今にして思えば、ここらがいわゆる歌舞伎劇の最後のひかりであったかも知れない。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
花川戸はなかわど助六すけろく鼠小僧次郎吉ねずみこぞうじろきちも、或いはそうだったのかも知れませんね。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
助六すけろく」の狂言の時などは、この二階桟敷の頭の上と、下の桟敷の頭の上に、花のれんがさがり、提灯ちょうちんがつるされるので、劇場内は、ぐるりと一目ひとめに、舞台の場面とおなじ調子をつくりだすので
この「助六すけろく」の芝居を見物に行った時に、わたしはまだ一つの思い出がある。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
出し物は、「助六すけろく漱石そうせきの「坊ちゃん」それから「色彩間苅豆いろもようちょっとかりまめ」。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)