冥途あのよ)” の例文
冥途あのよの奥の奥までも泌み透して行くような、何ともいえない物悲しい反響を起しつつ、遠くなったり近くなったりして震えて来るのであった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と言って文章の談をし、それから冥途あのよの官署の談をしたが、ほぼ現世と同じだった。陸は非常な大酒で一飲みに十の大杯に入れるほどの酒を飲んだ。
陸判 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
どこかで、うずらいている。ホロホロと昼の草むらに啼く鶉の声までが、もう冥途あのよみちのもののように聞えた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そやけど、わてはもう先のない身体からだだすやろ、冥途あのよ良人うちのに会うて、せがれ名前替なまへがへに誰に口上言うて貰ふたんやと訊かれた時、成駒屋はんやでは良人うちのが知りまへんやろ、あの人は一だい俳優やくしやだすよつて……。
という呼び声がツイ鼻の先の声のように……と……又も遠い遠い冥途あのよからの声のように、福太郎の耳朶みみたぼに這い寄って来た。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「江戸表から追放を申しつけると。冥途あのよへ追放でなくってよかったね」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冥途あのよの入口に一人ポッチで来たような気もちだ。しかし試験官は、それでも遠慮なんかミジンもしない。一匹もパスさせなくたって構わないんだから平気なもんさ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは呂布をらっして冥途あのよへ送らんとする偽りの葬列だった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冥途あのよ草鞋銭わらじせん。それっ』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「仲よく、冥途あのよへ行け」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)