内蔵之助くらのすけ)” の例文
劒岳の南を流れる劒沢の雪渓は白馬の大雪渓よりも長い、御山おやま谷、御前ごぜん谷、内蔵之助くらのすけ谷などの雪渓も、皆白馬のものに比して優るとも劣るものではない。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それが即ち平さんというので、本郷片町の神原内蔵之助くらのすけという三千石取りの旗本屋敷の馬丁でした。
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
九代目市川団十郎が『忠臣蔵』の大石内蔵之助くらのすけで、山科やましなの別れに「冬のめぐみ」をかなで、また四国旅行の旅土産たびづとに、「三津の眺め」の唱歌をつくったので、一層評判になった。
電車の駅近くへ出ると、小料理屋の間にはさまって、大石内蔵之助くらのすけの住んでいたと云う、写真や高札こうさつを立てた家があった。黄昏たそがれちかくて、くたびれきっていたが私は這入はいってみた。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
きっと命中あたる! 私も世界を廻るうちに、魔の睫毛一毫の秒に、へた基督キリストの像の目を三度射た、(ほほほ、)と笑って、(腹切、浅野、内蔵之助くらのすけ——仇討かたきうちは……おお可厭いやだけれど、 ...
これを聞いた家中かちゅうの者は、斉広なりひろ宏量こうりょうなのに驚いた。しかし御用部屋ごようべやの山崎勘左衛門かんざえもん御納戸掛おなんどがかりの岩田内蔵之助くらのすけ御勝手方おかってがた上木かみき九郎右衛門——この三人の役人だけは思わず、まゆをひそめたのである。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
内蔵之助くらのすけ延若えんじやく12・5(夕)
黒部峡谷の険怪と豪宕とは、上は内蔵之助くらのすけ谷から下は仙人谷に至る約二里の間に極度に発揮されている。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
立山東面の内蔵之助くらのすけ平は、幽邃ゆうすいな点に於て此処ここよりも優っているけれども、同時に陰鬱で恐ろしいような気がするので、私は寧ろ開闊で晴やかなこの平の方が好きです。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)