兵站部へいたんぶ)” の例文
「病院とか兵站部へいたんぶとか、婦人たちは、それぞれ適宜な部署へ分けて、なるべく、危険にさらされんように、明日でも配置してくれんか」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜来の雨のために、兵站部へいたんぶはこね回された道路に足を取られて朝になってしか到着することができなかった。兵士らは眠りもせず物も食わずに雨にぬれていた。
かれはまた一人取り残された。海城から東煙台、甘泉堡かんせんほう、この次の兵站部へいたんぶ所在地は新台子といって、まだ一里くらいある。そこまで行かなければ宿るべき家もない。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
柄でもないと云はれる事業に於ける兵站部へいたんぶを勤める爲めに、技師や、弟以下におくれてまだ居殘つてる義雄ではあるが、かう早く金の追求が來るとは預期しなかつた。
而してこれを日清戦争の実際に徴するに待遇の厚薄は各軍師団各兵站部へいたんぶに依りて一々相異なり、甲は以てこれを将校に準じ乙は以てこれを下士に準じ丙は以てこれを兵卒に準ず。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
私は兵站部へいたんぶの一室をりて、板の間に毛布を被って転がっていると、夜の十時頃であろう、だしぬけに戸の外でがあがあと叫ぶような者があった、ぎいぎいと響くような者があった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日露戦争の遼陽攻撃の前に於ける兵站部へいたんぶあたりの後方のことを取材している。
明治の戦争文学 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
兵の強さは兵站部へいたんぶの強さにある、その農を——ご承知でしょうか——長官は範を求めてアメリカにまいりました、文明開化のお傭い教師を連れて来ました、間もなく技術者がこちらに参るでしょう
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
病葉わくらばも若葉も、ごみのように舞って、人々の鎧へ吹きつけて来るし、炊事している兵站部へいたんぶの、薪のけむりが風圧のために地を低く這って
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この辺りに多い蘆荻ろてきは、数万の兵馬も、ひそやかに包んで、ただ兵站部へいたんぶのけむりのみが、朝夕、おびただしく水郷を煙らせた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将士の家族や百姓の女房たちに教えて、ここの兵站部へいたんぶでは、平常、衣食住あらゆる物を自給自足していた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうもこの頃、孫堅の陣には、元気が見えません。おかしいのは兵站部へいたんぶから炊煙すいえんがのぼらないことです。まさか、喰わずに戦っているわけでもないでしょうが」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、兵站部へいたんぶの雑兵が来ていう。そうだ、もはや殿へも御膳をさし上げろと、幕将たちも杯を納め、運ばれて来た兵糧米のきたてと、大きな汁鍋しるなべとを席に見た頃
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬の背には雑穀や青物、牛車には粮米ろうまいのかますなど、山のように積んでいる。いうまでもなく甲軍の荷駄隊だ。近郷から徴発して来たものを前線の兵站部へいたんぶへ輸送してゆく途中らしい。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵站部へいたんぶは炊煙をあげた。婦人軍は病院に詰めたり急拵えの営舎に立働いた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬の背のかます、牛車のうえの穀俵こくだわらなどを、陣屋の兵站部へいたんぶかつぎ込むのだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果然、彼の兵站部へいたんぶは大きな誤算にゆきあたって
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)