元来もともと)” の例文
旧字:元來
父親おやじの名代で交際大事と顔を出したものの、元来もともと伝二郎としては品川くんだりまでうまくもない酒を呑みに来るよりは
安達さんも顔が潰れますけれど、私達だって元来もともと私達が後楯うしろだてになって始めたことですから、こゝで負けたんじゃ好い恥を
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
元来もともと、木ッ端細工で、好個いい焚付けになる上に、屋根が生子板で、火が上へ抜けぬので、横へ横へと匍うからだろう。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
少々落着いての話では——いきおいに任せて、峠をさして押上った、途中別に仔細しさいはござらん。元来もともと、そこから引返そうというではなく、猿ヶ馬場を、向うへ……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
元来もともと、この村の区長の次男であったのですが、今年の二月に深良家……被害者の処へ養子に行った者です。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
聞く毎々ことごとに身にしみて口惜くちをしく、父様ととさんは何とおぼし召すか知らぬが元来もともと此方こちから貰ふて下されと願ふて遣つた子ではなし、身分が悪いの学校がどうしたのと宜くも宜くも勝手な事が言はれた物
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは如何いかに思つてをりましたところが、元来もともと私と云ふ者をきらひ抜いて御在おいでなのですから、あの歌が御座いますね、行く水に数画かずかくよりもはかなきは、思はぬ人を思ふなりけりとか申す、実にその通り
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼のこの趣味も元来もともと好きな道とは言いながら寄る年浪に跡目もなく、若いころの一粒種は行方知れず、ことに三年前に女房つれあいに別れてからというものは
「まあ/\、然う言わないで相談に乗っておくれ。元来もともと私が転地に出してやったようなものだから、私の手で素直に戻らせないと具合が悪いんですよ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「成程、面白い影響があるもんですな。あなたは元来もともと此処ですか?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
元来もともと嘘だから、何んな風も斯んな風もない。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)