なら)” の例文
……一時わたくしは鴎外柳村二先生のひそみならって、西詩の翻訳を試みたのも、思えば既に二十年に近いむかしである。
「珊瑚集」解説 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
ペーデルよ、不名誉は死をもってつぐのえ! 王室の名誉のため、父君の御負託にそむき、死をもって謝罪する兄を見ならえ。即刻自決して罪を償わるべし……。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
鹽原しおばら多助が忠孝の道を炭荷とともに重んじ。節義はあたか固炭かたずみの固くとって動かぬのみか。獣炭じゅうたんを作りて酒をあたゝめししん羊琇ようじゅうためしならい。自己おのれを節して費用を省き。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
翁は謙遜けんそんな人であった。たとえ長寿を保つことに自在を得ているにしろ、翁は人並を欲した。翁はこの時代の人寿のほどをおもんばかっておよそこれにならおうとした。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
明治初期に、鹿鳴館ろくめいかん時代という洋化時代があった。上流の夫人令嬢は、洋髪洋装で舞蹈会に出た。庶民もこれにならった。日本髪用の鼈甲を扱って来た室子の店は、このとき多大の影響を受けた。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)