俄盲目にわかめくら)” の例文
朝まだきの富士見原、往来に立った阪東薪十郎、俄盲目にわかめくら俄門附にわかかどつけ、弾いて唄うは河東節、水調子の玉菊である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ここへ来る途中で俄盲目にわかめくらとっさんに逢って、おなじような目の悪い父親があると言って泣いたじゃないか。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
佐助は我が眼前朦朧もうろうとして物の形の次第しだいに見え分かずなり行きし時、俄盲目にわかめくらあやしげなる足取りにて春琴の前に至り、狂喜きょうきしてさけんで曰く、師よ、佐助は失明いたしたり
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……母の男狂いをいうことはつらいのですけれども、母は、まるで、俄盲目にわかめくらにでもなったように、相手かまわず、どんな男とでも関係を結んで、放埒三昧ほうらつざんまいという体たらくになりました。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いっそ私が小三郎だと名告なのろうか……イヤ/\なまじいに打明けて身の上を話したら、是程までに思ってくれる音羽ゆえ、私が俄盲目にわかめくらに成り、笛を吹いて修行をする身の上に零落おちぶれ果てたと聞いたら
「わしの身体はごく都合がようてな、目に見て毒なものがあったり、耳に聞いて毒なものがあったりすると、じき俄盲目にわかめくらになったり、俄聾にわかつんぼになったりするゆえ、遠慮せずこの目の前でずんと楽しめよ」
俄盲目にわかめくらのものもらひ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
俄盲目にわかめくらで薪十郎、鈍感ではあったが必死の場合、精神が張り切っているためか、早くも察して喚き立てた。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俄盲目にわかめくらうしろから
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
聞き届けて下すったのでござりましょうお師匠様お師匠様私にはお師匠様のお変りなされたお姿は見えませぬ今も見えておりますのは三十年来眼の底にみついたあのなつかしいお顔ばかりでござりますなにとぞ今まで通りお心置きのうおそばに使って下さりませ俄盲目にわかめくらの悲しさには立ち居もままならずご用を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だがいったいどうしたんだ! こんな早朝に門附けとは? 扮装みなりの貧しい若者である。杖を持っているから盲目めくららしい。俄盲目にわかめくらに相違ない。感が悪そうにひろって行く。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俄盲目にわかめくらに相違なく、その探りかたも歩き方も、あぶなっかしく不慣れであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俄盲目にわかめくらの悲しさに、道に迷って来たものらしい。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)