会式えしき)” の例文
旧字:會式
万延元年の十月、きょうは池上いけがみ会式えしきというので、八丁堀同心室積藤四郎がふたりの手先を連れて、早朝から本門寺界隈かいわいを検分に出た。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また騒々しいお会式えしきの太鼓の雑音の中で、凡僧の説教や、演劇の舞台や、土佐まがいのまずい絵巻物の中から、日蓮上人を見てはいけません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
飾磨しかま郡増位山随願寺の会式えしきで僧俗集まり宴たけなわなる時、薬師寺のちご小弁は手振てぶりに、桜木の小猿という児は詩歌で座興を助けるうち争論起り小猿打たる
従来僧侶そうりょでさえあれば善男善女に随喜渇仰かつごうされて、一生食うに困らず、葬礼、法事、会式えしきに専念して、作善さぜんの道を講ずるでもなく、転迷開悟を勧めるでもなく
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すなわち所謂竹切の会式えしきで、まず十六日に護法善神社に参拝し、水場注連縄張の事、加持作法の事を行い、十八日に竹釣の行事がある。東が近江方、西が丹波方で、竹の数が各四本の設備をする。
本願寺様のお会式えしきにも負けぬという、それは大層な評判であった。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
メバル、アイナメ、海タナゴなどもよく交るが、カイヅは十月池上のお会式えしきまで釣れる。乗合船で防波堤へゆく、上は海風で涼しい、月が出る、銀河がさつとかかり、汽船のサーチライトが明滅する。
夏と魚 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
おきんちゃんのうちも日蓮宗狂だが、此家ここの二人もそうだった。長四畳には帝釈様たいしゃくさまひげ題目の軸がかかっていて、お会式えしき万燈まんどんの花傘の、長い竹についた紙の花が丸く輪にして上の方にかかっている。
じゃあうかがうがお経でもねえのにどうして寺まいりとかお会式えしきなんぞで唱えるんだ。そりゃあ話が違わあ。どう違うんだなどと、つまらないような論がいつまでも続き、ついにはみんな笑いだした。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まるで本門寺のお会式えしきのような有様。
イヤ、お会式えしきのようなにぎやかさ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
天保以来、参詣の足が少しゆるんだとはいいながら、秋の会式えしきについで、春の桜時はここもさすがに賑わって、団子茶屋に団扇うちわの音が忙がしかった。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あしたが池上いけがみのお会式えしきという日の朝、多吉があわただしく駈け込んで来た。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
十月もお会式えしきの頃から寒い雨がびしょびしょ降りつづいた。
半七捕物帳:06 半鐘の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)