以為おも)” の例文
旧字:以爲
以為おもへらく、写実小説は文学独立論を意味し、文学独立論は国民的性情の蔑視べつしを意味す、これ今の小説の国民に悦ばれざる所以ゆゑんなりと。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
以為おもへらく両者の短歌全く標準を異にす、鉄幹ならば子規なり、子規是ならば鉄幹非なり、鉄幹と子規とは並称すべき者にあらずと。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
魚を偸んだと雉を捕へたとの二つの事が相踵あひついで起つたので、家人は猫が人語を解すると以為おもつた。是より猫は家人の畏れ憚る所となつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この文句は何から採っただろうと、『淵鑑類函』四二五、鶏の条を探ると、〈王褒おうほう曰く、魚瞰鶏睨、李善以為おもえらく魚目つむらず、鶏好く邪視す〉とある。
されど作左はまた斯くの如く冷酷に看過する能はずして、以為おもへらく『いや/\仙千代丸都におきて、人の疑うけん事も詮なし。ただひとりある子、うしなはんも不便なり』
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしはその中橋よりお玉が池に移居したのを、任官とほゞ同じ頃の事と以為おもふ。それは小島成斎の九月二十二日の尺牘せきどくに拠つて言ふのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
故に魏の邢子才けいしさい以為おもえらく婦人保すべからずと。元景にいう卿何ぞ必ずしも姓王ならん。元景色を変える。
其の意に以為おもへらく、国民性すなはち国民の美質を描かざる小説は国民的性情を満足せしめざる小説なり
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
わたくしは正弘の蘭方を排したのは、榛軒に聴いたのではなからうかと以為おもふ。めぐむさんの蔵する所の榛軒の上書じやうしよがある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)