今市いまいち)” の例文
八時今市いまいち発の汽車に乗らぬと、今晩中に日光へくことは出来ぬ。一体いったい、塩原から日光へひと跳びというのがすでに人間わざではない。
というのは、変電所主任土岐健助宛の無名の手紙から足がつき、スタンプの消印で栃木県とちぎけん今市いまいち附近に国太郎が潜伏せんぷくしていると判ったのである。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
近江の湖水の北にある今市いまいちという村でも、村には共同の井戸が一つあるだけで、それがまたすぐれて良い水でありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
本來今市いまいちから日光までの路は、例の杉並木の好い路であるから、汽車で乘越すのは惜いのであるが、時代を逆行させて、白地の夏の衣の袖さへ青む杉のみどりの蔭を
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
これに引かへて、鬼怒川きぬがは方面は大分開けた。今市いまいちから中岩橋、藤原、あそこいらには電車がある。
行つて見たいところ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
さて北軍の総大将勝家は、今市いまいちの北狐塚に陣して居たのであるが、盛政の敗軍伝わるや、陣中動揺して、何時の間にか密かに落ちゆく軍勢多く、僅か二千足らずになった。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
叔父は行ったきり、いつまでも今市いまいちの方に引っかかっていた。一行はそこから馬に乗って、栗山の方へ深く入って行かなければならなかった。日光で遊んでいるような噂も伝わった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ついでの事に、夜旅をかけてもいい。今市いまいちとまで、突っ走りとうございますね」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寛政頃の日光道中の紀行に、今市いまいち附近でそれを見たという記事もあるが、この連衆はすでにみな、その物悲しい情趣をちゃんと体験していたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)