仇花あだばな)” の例文
怠って、荊園けいえん仇花あだばなに、心を奪われたりなどして、思えば面目ない。しかもその天罰を父に代って子がうけるとは。——ああ、ゆるせよ曹昂
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実花みばなを飾って仇花あだばなを隠すか」鎌二郎はそう云いながら、するどい眼つきでその席を見まわし、鼻でふんとわらった、「——この法要はごまかしだ、こんな法要はやめてしまえ」
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
辛辣しんらつ叱咜しったです。仕方がないと言うように手を添えた女達を促して、退屈男が瀕死の弥太一を運ばせていったところは、一瞬前、遊女達の美しい仇花あだばなが咲いた二階のあの大広間でした。
いまさき信じた一つの愛、それも、地上をはなれた虚空の中でのみ花をひらく、美化された一つの空費、ただ初夏の夜空にのみ存在する、はかない架空の仇花あだばなにすぎないのではないのか。
昼の花火 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
はて、見ていれば綺麗なものを、仇花あだばななりとも美しく咲かしておけばい事よ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仇花あだばな
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
はて、見て居れば綺麗なものを、仇花あだばななりとも美しく咲かして置けばい事よ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三の烏 なぞとな、おふためが、ていい事をぬかす癖に、朝烏あさがらすの、朝桜、朝露あさつゆの、朝風で、朝飯を急ぐ和郎わろだ。何だ、仇花あだばななりとも、美しく咲かして置けばい事だ。から/\からと笑はせるな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)