人目じんもく)” の例文
かくては今日東京市中の寺院にして輪奐りんかんの美人目じんもくを眩惑せしむるものは僅に浅草の観音堂かんのんどう音羽護国寺おとわごこくじ山門さんもんその二、三に過ぎない。
今般、当村内にて、切支丹きりしたん宗門の宗徒共、邪法を行ひ、人目じんもくまどはし候儀に付き、私見聞致し候次第を、逐一ちくいち公儀へ申上ぐ可きむね、御沙汰相成り候段屹度きつと承知つかまつり候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(註、hocuspocus は手品師の呪文じゅもんにして元来偽拉丁語にせラテンご人目じんもくくらますものゝ称)むしろ凡人の失敗に鑑みしむるの凡人伝をもって大衆を導くにかず。世界は多数のナポレオンを要しない。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
元禄年間は元祖団十郎だんじゅうろうが創意せる荒事の新技芸都会の人目じんもくを驚かしたる時なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これすなわち国貞風の極彩色ごくさいしきにして当時の人目じんもくを驚かしたるものなり。余はこの濃厚なる国貞の『田舎源氏』に対して国芳の得意とせる武者合戦の錦絵を以て流行の両極端を窺ふに足るものとなす。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)