人々にんにん)” の例文
第十七条 人にまじわるには信を以てす可し。おのれ人を信じて人も亦己れを信ず。人々にんにん相信じて始めて自他の独立自尊をじつにするを得べし。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
人々にんにんに相当したことをやらなけりゃ物笑いだからねえ……いっそ、上方から女浄瑠璃の大一座でもんで来ようか知ら。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人々にんにん力をここに致すとき、一般の幸福をうながして、社会を真正の文明に導くが故に、悲劇は偉大である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いずれも忠信の者どもにそうろうあいだ御回向ごえこうをもなされくださるべく候。その場に生残り候者ども、さだめて引出され御尋ね御仕置にも仰附おおせつけらるべく、もちろんその段人々にんにん覚悟の事に候。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
右の如く平安を好むの人情は、世界中に通用してたがうことなく、各国の交際も人々にんにん渡世とせいも、その目的、平安にあらざるはなし。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
してみると世界は観様みようでいろいろに見られる。極端に云えば人々にんにん個々別々の世界を持っていると云っても差支さしつかえない。同時にその世界のある部分は誰が見ても一様である。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
決してこの間に成学せいがくするというにはあらず。もちろん人々にんにんの才・不才もあれども、おおよそこれまで中等の人物を経験したるところを記せしものなり。
慶応義塾新議 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
分ったと云っても、屁をいくつ、ひった、ひったと云う。そうしてそれが処世の方針だと云う。方針は人々にんにん勝手である。ただひったひったと云わずに黙って方針を立てるがいい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大は各国の交際に権を争い、小は人々にんにんの渡世に利をむさぼり、はなはだしきは物を盗み人を殺すものあり。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第十四条 社会共存の道は、人々にんにんみずから権利を護り幸福を求むると同時に、他人の権利幸福を尊重して、いやしくも之を犯すことなく、以て自他の独立自尊をきずつけざるに在り。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
その心掛けはみすべしといえども、人々にんにんに天賦の長短もあり、家産・家族の有様もあり、幾千万の人物が決して政治家たるべきにも非ず、また大学者たるべきにも非ず。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人為じんいの習慣というも、そのへんはこれを人々にんにんの所見にまかして問うことなしといえども、ただ平安を好むの一事にいたりては、古今人間の実際に行われてたがうことなきを知るべきのみ。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
元来、文明とは、人の智徳を進め、人々にんにんみずからその身を支配して世間相交わり、相害することもなく害せらるることもなく、おのおのその権義を達して一般の安全繁盛を致すを言うなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ゆえに世界中、なんらの国を論ぜず、なんらの人種たるを問わず、人々にんにん自からその身体を自由にするは天道の法則なり。すなわち人はその人の人にして、なお天下は天下の天下なりというが如し。
中元祝酒の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)