ヌシ)” の例文
殊に其中の「あがヌシ御魂ミタマたまひて、春さらば、奈良の都に喚上メサげたまはね」とある一首は、よごととしての特色を見せてゐる。
「馬耳よ。よく聞け。おヌシが青ガサやチイサ釜とあくまで腕くらべをしたい気持は殊勝であるが、こんなウチで仕事をしたいとは思うまい」
夜長姫と耳男 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
完了の助動詞の「ぬ」、「ヌマ」「ヌク」「ヌシ」「キヌ」などの「ヌ」は「奴」の類の文字で書いて、前の「怒」の類の文字では書かず、別の類に属する。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
飛び離れた処々にも、この語を使ふ地方で著しい事は、みづし・みんつち・めどち・どちなど言ふが、大抵水のヌシの積りで、村人は畏がつてゐる。
河童の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
船でヒダへ来て神武天皇に位をさずけた位山のヌシのことを姉小路基綱の八所和歌集は一体にして顔が二ツ、手足四本、これによって両面四手と云う、という
さずくべき神がこの山のヌシで、身体が一ツで顔が二ツ、手足四ツの両面四手という人が位山の主である。彼は雲の波をわけ、天ツ舟にのってこの山に来て神武天皇に位を
神主も又神人の主体又は神々のヌシといふことになつてゐるから並べて考へてよい訣だ。漠たる表象に、偏向あらせられる所から、意義も固定するので、中には浮動したまゝと謂ふやうなものがある。
日琉語族論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
そこに住みついてから十年にもなるという人のウチのヌシになりそうな存在であった。
淵や滝壺のヌシに、牛の説かれてゐる処もかなりにある。
河童の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ヒダではこれが天の船で位山へついたという日本のヌシで、大和の敵軍が攻めてきたとき、ひそんでいた日面ヒオモの出羽の平のホラアナをでてミノの武儀郡下ノ保で戦い敗れて逃げ戻り、宮村で殺された。