丸髷まげ)” の例文
上州じょうしゅう伊香保千明いかほちぎらの三階の障子しょうじ開きて、夕景色ゆうげしきをながむる婦人。年は十八九。品よき丸髷まげに結いて、草色のひもつけし小紋縮緬こもんちりめん被布ひふを着たり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
やや傾けたる丸髷まげかざりの中差の、鼈甲べっこうの色たらたらと、打向う、洋燈ランプの光透通って、かんばせの月も映ろうばかり。この美人たおやめは、秋山氏、蔦子つたこという、同姓たもつの令夫人。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんなにお丸髷まげにお結い遊ばして、ちゃんとすわっておいで遊ばすのを見ますと、ばあやがお育て申し上げたお方様とは思えませんでございますよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
と小さな丸髷まげを、ほくほくもの、折敷おしきの上へ小綺麗に取ってくれる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つけられた方は、呆れるより、いきなりなぐるべき蹴倒し方だったが、かたわらに、ほんのりしている丸髷まげゆえか、主人の錆びたびょうのような眼色めつき恐怖おそれをなしたか、気の毒な学生は、端銭はした衣兜かくし捻込ねじこんだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時は、艶々つやつやした丸髷まげに、浅葱絞あさぎしぼりの手柄てがらをかけていなすった。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「うふふ、丸髷まげども、よう出来たたい。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)