丸呑まるのみ)” の例文
一つも解らぬことを対手あいて丸呑まるのみにして、承知之助、照子は呆れて、「夫人あなたどこへ、そうして何が、あの何でございますの。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三十円の月給を頂戴ちょうだいしてやうやうに中学校の教員となつて校長のおひげを払ふやうな先生が天下丸呑まるのみの立志論を述べ立つるなど片腹痛きにも限りあるものなり。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
大きなおそなえに小さいおそなえ附着くっついてヤッサモッサを始める段になると、もう気が逆上うわずッて了い、丸呑まるのみにさせられたギゴチない定義や定理が、頭の中でしゃちこばって
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
非実験的に丸呑まるのみにし自ら信条の純正を以て誇り、人にゆるにこれを以てし、もし人の信仰または行為にして自分らの信条と相反する時は、ただちに彼を不信非行の罪人つみびととして排斥せんとする。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
級友という級友が皆然うで、平生へいぜいの勉強家は勿論、金箔附きんぱくつきの不勉強家も、試験の時だけは、言合せたように、一しき血眼ちまなこになって……鵜の真似をやる、丸呑まるのみに呑込めるだけ無暗むやみに呑込む。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)