不釣合ふつりあい)” の例文
米を大量にしらげるための杵であって、後に餅搗きにこれを転用したことは、今でも餅臼もちうすが是と不釣合ふつりあいに小さいのを見てもわかる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
不釣合ふつりあいに大きな口をしていて、その口を、しじゅう何かみこむ時のように固く結んでいるのだ。村井長庵ちょうあんといって、麹町平河町一丁目の町医である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
少し不釣合ふつりあいのようにあるが、血統は両人共すこぶよろしく、往古はイザ知らず、およそ五世以降双方の家に遺伝病質もなければ忌むべき病にかかりたる先人もなし。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
モーニングの袖からも手らしいものが出ていますが、それが不釣合ふつりあいにも野球のミットのような大きさです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
身分の不釣合ふつりあいということを考えないわけではなかったが、彼女たちの育って来た環境が、産まれながらに、複雑な階級の差別感を植えつける余裕も機縁もなく
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それも畢竟ひっきょう此方が余りむずかしいことを云って、不釣合ふつりあいによい相手を求めようとするところから、かえって妙な誘惑にかかるようなことにもなるので、考えてみれば
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
与次郎のへらへら調と、三四郎の重苦しい口のききようが、不釣合ふつりあいではなはだおかしい。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お前さんは川口町であれだけの御身代のお嬢様釣合わぬは不縁の元、とてもおとっさんが得心して女房にょうぼにくれる気遣きづかいもなければ、又私が母に話しても不釣合ふつりあいだから駄目だと云って叱られます
先方も祖父の代まではる北陸の小藩の家老職をしていたとかで、現に家屋敷の一部が郷里に残っていると云うのであるから、家柄の点ではそう不釣合ふつりあいでもないのではあるまいか。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かく雪子さんを大垣まで寄越してもらいたいと云って来た、沢崎家は数千万円の資産家で、今日の蒔岡まきおか家とは格段の相違があり、不釣合ふつりあい過ぎて滑稽こっけいのようだけれども、先方は奥さんに死なれて
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)