上達部かんだちめ)” の例文
いつも時平の腰巾着こしぎんちゃくを勤める末社まっしゃどもの顔ぶれを始め、殿上人てんじょうびと上達部かんだちめなお相当に扈従こしょうしていて、平中もまたその中に加わっていた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ひとり、秀郷だけ、内へはいって、ほかの郎党は、平門にのこし、こう、大臣家の上達部かんだちめへ、申し入れた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(臨時の客は二宮にぐう大饗だいきやうと同日に摂政関白家が、大臣以下の上達部かんだちめを招いて催す饗宴で、大饗と別に変りがない。)五位も、外の侍たちにまじつて、その残肴ざんかう相伴しやうばんをした。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
公卿方堂上人どうじょうびと上達部かんだちめ、いずれその日の生活たつきにも困り、縁をたよって九州方面の、大名豪族の領地へ参り、生活くらしするようになりまして、わが洞院信隆卿にも、過ぐる年周防すおうの大内家へ
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
必ず「上達部かんだちめ殿上人てんじょうびと」であったものが、「諸大夫しょだいふ、殿上人、上達部」になっている。昔の写本、木版本でない現今の活字本で見る人は一目瞭然いちもくりょうぜんとわかるはずである。文章も悪い、歌も少くなった。
また紅葉賀もみじのがの試楽なども、「上達部かんだちめ皇子みこだちも皆泣きぬ」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そして院が上達部かんだちめ殿上人てんじょうびとと御一緒に水飯すいはんを召しあがったという釣殿はどのへんにあったのだろうと右の方の岸を
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
前司の父も受領ずりやうとは申せ、近い上達部かんだちめの子でもございますから、お会ひになつては如何いかがでございませう? かやうに心細い暮しをなさいますよりも、少しはしかと存じますが。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夏の頃水無瀬殿の釣殿つりどのにいでさせ給ひて、ひ水めして水飯すいはんやうのものなど若き上達部かんだちめ殿上人てんじょうびとどもにたまはさせておほみきまゐるついでにもあはれいにしへの紫式部こそはいみじくありけれ
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、事のなりゆきを呆然ぼうぜんと眺めていた公卿や上達部かんだちめたちに声をかけた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)