三鷹みたか)” の例文
東京の三鷹みたかの住居を爆弾でこわされたので、妻の里の甲府こうふへ、一家は移住した。甲府の妻の実家には、妻の妹がひとりで住んでいたのである。
薄明 (新字新仮名) / 太宰治(著)
御遺言にまかせて、お骨は土山つちやまの常明寺の祖父のお墓の傍に納めました。年が立って兄も亡くなられ、向島の墓も都合で三鷹みたかへ移されました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それが三鷹みたかの駅の近くにある連雀れんじゃくという村だったということが、古い書物には書いてある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
近在は申すまでもなく、府中八王子あたりまでもお土産折詰になりますわ。三鷹みたか村深大寺、桜井、駒返こまかえし、結構お茶うけはこれに限る、と東京のお客様にも自慢をするようになりましたでしょう。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから、一同、ばらばらになってしまいましたが、そのとき私の書いた報告文をもって、ボートへ戻ったはずの三鷹みたかとも、それっきり会いません。そのうちに、私は通風筒つうふうとうの前に出ました。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は気がかりの借銭を少しずつ整理したが、之は中々の事業であった。そのとしの初秋に東京市外、三鷹みたか町に移住した。もはや、ここは東京市ではない。
東京市外の三鷹みたか町に、六畳、四畳半、三畳の家を借り、神妙に小説を書いて、二年後には女の子が生れた。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
三鷹みたかの小さい家は、私の仕事場である。ここに暫くとじこもって一つの仕事が出来あがると私は、そそくさと三鷹を引き上げる。逃げ出すのである。旅に出る。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
現在のこの武蔵野むさしのの一角に、八畳、六畳、四畳半、三畳の新築の文化住宅みたいなものを買い、自分は親戚しんせきの者の手引きで三鷹みたか町の役場に勤める事になったのである。
家庭の幸福 (新字新仮名) / 太宰治(著)
三鷹みたかの僕の家のすぐ近くに、やはり若松屋というさかなやがあって、そこのおやじが昔から僕と飲み友達でもあり、また僕の家の者たちとも親しくしていて、そいつが
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私の家は三鷹みたかの奥の、ずっと奥の、畑の中に在るのであるが、ほとんど一日がかりで私の陋屋ろうおくを捜しまわり、やあ、ずいぶん遠いのですね、と汗を拭きながら訪ねて来る。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
この、三鷹みたかの奥に移り住んだのは、昨年の九月一日である。その前は、甲府の町はずれに家を借りて住んでいたのである。その家のひとつきの家賃は、六円五十銭であった。
無趣味 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と玄関で女のひとの声がして、私が出て見ると、それは三鷹みたかの或るおでんやの女中であった。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
三鷹みたか駅から省線で東京駅まで行き、それから市電に乗換え、その若い記者に案内されて、ず本社に立寄り、応接間に通されて、そうして早速ウイスキイの饗応にあずかりました。
美男子と煙草 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すなわち、共に府下三鷹みたか下連雀しもれんじゃくの住人なのである。私は角力に関しては少しも知るところが無いのだけれど、それでも横綱、男女川に就いては、時折ひとからうわさを聞くのである。
男女川と羽左衛門 (新字新仮名) / 太宰治(著)
東京の郊外の下宿から、かばん一つ持って旅に出て、そのまま甲府に住みついてしまったのです。二箇年ほど甲府にいて、甲府で結婚して、それからいまの三鷹みたかに移って来たのです。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
その細田氏が、去年の暮に突然、私の三鷹みたかの家へ訪れて来たのである。
女神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
鶴の姉は、三鷹みたかの小さい肉屋にとついでいる。あそこの家の二階が二間。
犯人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おとといの晩はめずらしいお客が三人、この三鷹みたか陋屋ろうおくにやって来ることになっていたので、私は、その二三日まえからそわそわして落ちつかなかった。一人は、W君といって、初対面の人である。
酒ぎらい (新字新仮名) / 太宰治(著)
あなたが急にお偉くなって、あの淀橋のアパートを引き上げ、この三鷹みたか町の家に住むようになってからは、楽しい事が、なんにもなくなってしまいました。私の、腕の振いどころが無くなりました。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
その頃から既に、日本では酒が足りなくなっていて、僕が君たちと飲んで文学を談ずるのにはなはだ不自由を感じはじめていた。あの頃、僕の三鷹みたかの小さい家に、実にたくさんの大学生が遊びに来ていた。
未帰還の友に (新字新仮名) / 太宰治(著)
昭和十九年晩秋、三鷹みたかの草屋に於て
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)