一襲ひとかさ)” の例文
そう独り決めして、にこにこしていると、武蔵は、引船が立ち去るとすぐ、小袖羽織のその一襲ひとかさねを、城太郎の前へ出していった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚駭おどろきのあまり青年わかものは、ほとん無意識むいしきに、小脇こわきいだいた、一襲ひとかさねの色衣いろぎぬを、ふねむかつてさつげる、とみづへはちたが、其処そこにはとゞかず、しゆながしたやうにかげ宿やどうきくさたゞよふて、そであふ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、いつの間にか、武蔵の前にも、綿服ではあるが、肌着から上着まで、あかのつかない一襲ひとかさねがそろえてある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、さっきの引船が、きちんと畳みつけたあわせと羽織の一襲ひとかさねを抱えて来て、彼の前におく。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへ、同心の加山耀蔵が、自身番から一襲ひとかさねの小袖を抱えて飛んで来た。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)