一握ひとにぎり)” の例文
バサリと音して、一握ひとにぎりの綿が舞うように、むくむくとうずまくばかり、枕許の棚をほとんどころがって飛ぶのは、大きな、色の白いひとりむしで。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紅の襞は鋭い線を一握ひとにぎりの拳の中に集めながら、一揺れ毎にかんを鳴らしてすべり出した。彼はまくらを攫んで投げつけた。彼はピラミッドを浮かべた寝台の彫刻へ広い額をこすりつけた。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
涙ででたようになったのに、こわれた丸髷まるまげびんの毛が一握ひとにぎりへばり附いている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
もっぱら興味きょうみの中心はかくされた土中の一握ひとにぎりの花の美しさにつながっていた。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
小刀のさきが、夢のごとく、元結をはじくと、ゆらゆらと下った髪を、お妙が、はらりとったので、さっと流れた薄雲の乱るる中から、ふっと落ちた一握ひとにぎりの黒髪があって、主税の膝に掛ったのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)