一吸ひとすい)” の例文
と腹這になれば、花里は煙草をつけて煙管きせるを我手で持ったまゝ一吸ひとすいすわした跡を、その儘自身ですい、嫣然にっこりいたし
物を案ずるさまにて部屋の内をあちこち歩き、何かそこらの物を手に取りては置き、また外の物を手に取りては置き、紙巻を一本取りて火を付け、一吸ひとすい吸い、たちまちそれを投げ捨て
しわぶきさえ高うはせず、そのニコチンの害を説いて、一吸ひとすいの巻莨から生ずる多量の沈澱物をもって混濁した、恐るべき液体をアセチリンの蒼光あおびかりかざして、と試験管を示す時のごときは
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石田は葉巻に火を附けて、さも愉快げに、一吸ひとすい吸って、例の手習机に向った。北向の表庭は、百日紅さるすべりまばらな葉越に、日が一ぱいにさして、夾竹桃にはもうところどころ花が咲いている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこでまた清々すがすがしく一吸ひとすいして、山のの煙を吐くこと、遠見とおみ鉄拐てっかいの如く
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)