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けかへ
さげ詫入る處を猶も又めつた打ちに打ち
敲き
頓て
蹴飛し
蹴返して直に請人石町甚藏店の六右衞門を
笠森稻荷のあたりを
通る。
路傍のとある
駄菓子屋の
奧より、
中形の
浴衣に
繻子の
帶だらしなく、
島田、
襟白粉、
襷がけなるが、
緋褌を
蹴返し、ばた/\と
駈けて
出で、
一寸、
煮豆屋さん/\。
法律は鉄腕の如く雅之を
拉し去りて、
剰さへ
杖に離れ、涙に
蹌ふ老母をば道の
傍に
踢返して顧ざりけり。
噫、母は
幾許この子に思を
繋けたりけるよ。