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きゝゐ
又もとの
窟へはいりしゆゑ
我は
窟の口に
居て
雪車哥のこゑやすらんと
耳を
澄して
聞居たりしが、滝の音のみにて鳥の
音もきかず、その日もむなしく
暮て又穴に一夜をあかし、熊の
掌に
飢をしのぎ
詰て
聞居たり斯くとも知らず
元來お菊は
愚なれば小袖金子を見て
忽ち
心迷ひ何の
思慮もなく承知をぞなしたりける又長助は
篤と樣子を
聞濟し早々又七に右の
事故を
鎭めて
聽居たりしが
今語り
終りし時一同に
咄と
譽る聲
家内に
響て聞えけり此折しも第一の客なる彼の味岡勇右衞門は
如何致しけんウンと云て
持病の
癪氣に
差込れ齒を
噛しめしかば上を