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きえはて
逆手に取直し胸の
邊りへ押當て
柄も
徹れと
刺貫き止めの一刀引拔ば爰に命は
消果ぬ
實に世に不運の者も有者哉夫十兵衞は兄長庵の爲に命を
一
心不亂に
祈りしに今日は
早源内の罪
極り御仕置と聞し故娘の豐は其日
父の引れ
行し御仕置場へ行て見るに終に
仇し
野の
露と
消果しゆゑ
泣々も其所を
ば言ひ出してひよな
騷ぎに成たりと酒も
何處へか
醒て
行色も
戀路も
消果てこはそも如何にと
惘れ果十方に暮て居たりしが忠兵衞は
迯もされねば
是待給へお光殿御番所へ
駈込でも
外事成ぬ大事の一
條人の命に關る事先々
篤と
勘考てと
言紛らすを