えき)” の例文
が、かれ年月としつきつとともに、此事業このじげふ單調たんてうなのと、明瞭あきらかえきいのとをみとめるにしたがつて、段々だん/\きてた。かれおもふたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すなわち生物各種に関する一個一個の事実が明らかに知れれば、ただちにこれを利用して人生の物質的方面にえきすることができる。
誤解せられたる生物学 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
ここをやめたからとて、妻子さいしをやしなってゆくくらいにこまりもせまいが、しかたがない、どうなるものかえきのない考えはよそう。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
されど、百万遍のまよごと何のえきなけれど聞いてつかわすべしとの仰せをさいわい、おのが心事を偽らず飾らずただ有りのままに申し上ぐべく候。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
をしむに足らずと雖も我思慮しりよなく青侍士あをざむらひ共に欺かれしなどと人口にかゝらんこと殘念ざんねんなり併し今更くゆるもえきなし兎に角愼み罷在公儀かみの御沙汰を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新しくえた果樹もずいぶん多い。湖沼こしょうを利用して養魚をすすめることも忘れなかった。小禽ことりけもののたねまで、えきするものは、山野へ放った。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、そんなことをすれば、アンの軽蔑けいべつをうけるばかりで、何のえきにもならないと思ったので、それはやめることにして、ただ心の中で、アンにびた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仁人君子は、我が利害を棄てて人のためにし、我に損して他にえきすというといえども、その実は決して然らず。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
地上ちじゃうそんするものたるかぎり、如何いかしいしな何等なにらかのえききょうせざるはく、また如何いかいものも用法ようはふたゞしからざればそのせいもとり、はからざるへいしゃうずるならひ。
中には越中次郎兵衞盛次ゑつちゆうのじらうびやうゑもりつぐ、上總五郎兵衞忠光、惡七兵衞景清あくしちびやうゑかげきよなんど、名だたる剛者がうのものなきにあらねど、言はば之れ匹夫ひつぷゆうにして、大勢たいせいに於てもとよりえきする所なし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
余計な悪戯いたずらだと思う。先方にえきもないのに好んで人を苦しめる泊り方だと思う。しかしいくら、どう思っても仕方がないと思う。小野さんは返事をする元気も出なかった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんゆえに一にんえきなきものをころして多人數たにんずえきすることしきことなしといふ立派りつぱなる理論りろんをもちながら流用りうようすること覺束おぼつかなき裝飾品そうしよくひん數個すこうばひしのみにして立去たちさるにいたりしか
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
健康けんこうなからだをつくると同時に、団体競技だんたいきょうぎとして、協同きょうどう精神せいしんをやしなうためのものなのだ。ぎせいの精神せいしんのわからない人間は、社会へ出たって、社会をえきすることはできない。
星野くんの二塁打 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
われこれく、良賈りやうこ(四)ふかざうして・きよなるがごとく、君子くんし盛徳せいとくありて容貌ようばうなるがごとしと。(五)驕氣けうき多欲たよく(六)態色たいしよく(七)淫志いんしとをれ。みなえきし。
学校がっこうにきても、勉強べんきょうにまったく興味きょうみがないくらいなら、そして、先生せんせいかおばかりているようでは、なんのえきにもならないことだから、いっそ学校がっこうをやめて、奉公ほうこうにいくなり、家庭かてい
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
のちの人をえきするんだからね、ぼくはいまそれがわかった、きみらはどう思うかね
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
此様こんなに貰っちゃア気の毒だが、おめえさんも出世イして、んな身分になってわしも嬉しいからお辞儀イせずに戴きやす……私イえきもねいこんだ、お前さんのことを何でひとに話すもんかね
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其方大切なればこそお師匠様と追従ついしようもしたれ、えきも無き他人を珍重には非らず、年来としごろ美事に育だて上げて、人にも褒められ我れも誇りし物を、口惜しきぎぬきせられしはの人ゆゑなり
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それはえきなきことに浪費されているといえないだろうか。仕事を見ると一つでも多く筆を加え、一つでも多く色を添え、少しでも多く手間をかけたものが入念の作として尊ばれるのである。
北九州の窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
阿波十郎兵衛あわのじゅうろべえなど見せて我子泣かすもえきなからん」源叔父は真顔にていう。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ただその事のそんなるとえきなるとを説きて得心とくしんせしむべし。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
過ぎし世の智慧ちゑといふもの何のえきかある
不可能 (旧字旧仮名) / エミール・ヴェルハーレン(著)
が、かれ年月としつきつとともに、この事業じぎょう単調たんちょうなのと、明瞭あきらかえきいのとをみとめるにしたがって、段々だんだんきてた。かれおもうたのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わしははや官職を退いて、おおやけには何のえきもなさぬ閑人ひまじんにすぎぬ。その閑人が、わずか五里の城下へまいるに、馬の労をついやしては、勿体ないではないか。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つぐのひ給ふ事初り今是過料金くわれうきんといふなり大にえきある御仁政ごじんせい然るに賢君けんくんの御心をしらず忠臣ちうしんの奉行をしらざるともがら此過料金このくわれうきんの御政事せいじなんしていはく人のつみを金銀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人間必要の習慣を成すにえきあるか妨げあるかを考え合わせて、然る後に手を下すべきのみ。
家庭習慣の教えを論ず (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
果ては予はどういう事があろうと仕方がない、えきの無いくよくよ話はよせと一かつした。
大雨の前日 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「いや、そこが可笑しいと言うんだよ。同じ苦労するならばだナ、もっと大きなことの為に苦労するがいじゃないか。もっと世の中のために成るとか、人間全体のためにえきになるとかサ」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はれなければだまつてます。はれてもふてえきなき仲間なかまむかつてはだまつてます。けれども諸君しよくんごと教育けういくたか紳士しんしはれてはじつ眞面目まじめぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんといふことを公言こうげんするのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いとなむがうへれは本家ほんけとてもちひもおもかるべくわれとて信用しんよううすきならねど彼方かなた七分しちぶえきあるときこゝにはわづかに三分さんぶのみいへ繁榮はんえい長久ちやうきうさく松澤まつざはきにしかずつはむすめ容色きりやうすぐれたればこれとてもまたひとつの金庫かねぐら芳之助よしのすけとのえにしえなばとほちやうかど地面ぢめん持參ぢさんむこもなきにはあらじ一擧兩得いつきよりやうとくとはこれなんめりとおもこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ああこんな時に、忍剣ほどの力がじぶんに半分あればと、えきないくりごともかれの胸にはうかんだであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見て打驚うちおどろきて居たる時におせん穩當しとやかに昌次郎に向ひ昨日一寸ちよつと御目にかゝり金子百五十兩御渡し申せし彌太八樣もう私しかまゐりし上はあらそひ給ふもえきなきこと早々金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しこうしてこの体面と栄名とを張るにいささかにてもえきすべきものはこれを採り、害すべきものはこれを除かんとするもまた、日本国民の身においてまさに然るべき至情なるべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
世々ひろく末代の衆と国土にえきさねばならぬ。これをくる者の任はゆえに重い……たのむぞ、兵庫
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えきもなき虚飾に時を費すは学生の本色にあらず。この段心得のめに掲示す。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
えきないことにひまとらずに、なんじ早々そうそう北越ほくえつへひきあげい。そして、勝家かついえとともに大軍をひきい、この裾野すそのへでなおしてきたおりには、またあらためて見参げんざんするであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然れども難きを見てなさざるは丈夫の志にあらず、えきあるを知りておこさざるは報国の義なきに似たり。けだしこの学を世におしひろめんには、学校の規律を彼に取り、生徒を教道するを先務とす。
慶応義塾の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だが泣き虫蛾次郎がじろうよ、ひとの愛しているわしをうばって乗りまわしたり、ひとのダシに使われてもらったお金で買いぐいをしたり、またえきもなく都の町をかれあるいたりして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこを闡明せんめいして天下をえきしてくれるほどな人は、御身をいて他にはない。伊勢守は、実は非常なよろこびを以て、この半歳はんとしを送っていたのでござる。——わたくしからかくの通りお願いする
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えきなき問答」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)