針仕事はりしごと)” の例文
祖母おばあさんや伯母をばさんが針仕事はりしごとをひろげるのもその部屋へやでしたし、とうさんが武者繪むしやゑ敷寫しきうつしなどをしてあそぶのもその部屋へやでしたし
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わたしは、このうちまえをこれまでたびたびとおって、おばあさんが、まどした針仕事はりしごとをなさっているのをっています。」と、少女しょうじょこたえました。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
住居すまゐ其処等そこら散歩さんぽをする、……ほこらいへにはおうら留主るすをして、がために燈火ともしびのもとで針仕事はりしごとでもるやうな、つひしたたのしい心地こゝちがする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
母屋のえんには、おっかさんのおっかさん、つまり林太郎にとってはおばあさんがめがねをかけて針仕事はりしごとをしていましたが、林太郎たちの姿すがたを見ると、めがねをはずしながら
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そして、私は、文法、地理、歴史、それにより手の込んだ針仕事はりしごとの初歩を教へた。
やがて台所だいどころかたづけものましたおくさんはつぎかしてある子どもやう子をちよつとてくると、またちやへはいつて※て、しやうちかくにきよせた電燈でんとうの下で針仕事はりしごとにとりかゝつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さればとて香爐峯かうろほうゆきみすをまくの才女さいぢよめきたるおこなひはいさゝかも深窓しんそうはるふかくこもりて針仕事はりしごと女性によしやう本分ほんぶんつく心懸こゝろがまこと殊勝しゆしようなりき、いへ孝順かうじゆんなるはいでかならず貞節ていせつなりとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
内にはすうちやんが今日をはれと着飾つて、その美しさと謂ふものは! ほんにまああんな縹致きりようと云ひ、気立と云ひ、諸芸も出来れば、よみかき針仕事はりしごと、そんなことは言つてゐるところではない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くらし居たりしが如何なるえんか其後家ごけの處へ兄清兵衞がはひこみそれより辛抱しんばうして段々とかせぎ出し夫に又女房が勿々なか/\針仕事はりしごとよくこゝ彼處かしこにて頼まれ夫婦にてかせぎしかばたちまち三四年のあひだに金が出來て普請ふしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
針仕事はりしごと煮炊にたきもよくは出来できない道子みちこ手馴てなれない家庭かてい雑用ざつようはれる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
おつぎはもう幾年いくねんといふながあひだのことではあるが、それでもきまつた月日つきひ繼續けいぞくして針仕事はりしごとはげ餘裕よゆうがなくやうやについたかとおもふと途中とちうつたりめたりするのでおもやう上達じやうたつはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一人の年った寡婦かふがせっせと針仕事はりしごとをしているだろう、あの人はたよりのない身で毎日ほねをおって賃仕事をしているのだがたのむ人が少いので時々は御飯も食べないでいるのがここから見える。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うすぐもりのしたそらを、つめたいかぜいていました。少年しょうねんは、おかあさんの、針仕事はりしごとをなさる、まどのところで、ぼんやり、そとほうをながめていました。
煙と兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女かのじょべつわるかおもせず、ただそれをながしたままでいえもどってみると、ちゃ障子しょうじのわきにはおはつ針仕事はりしごとしながら金之助きんのすけさんをあそばせていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上杉うへすぎのおぬひと桂次けいじがのぼせるだけ容貌きりようも十人なみすこしあがりて、よみ十露盤そろばんそれは小學校せうがくかうにてまなびしだけのことは出來できて、にちなめる針仕事はりしごとはかま仕立したてまでわけなきよし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるとき、よっちゃんは、おかあさんが針仕事はりしごとをしていなさるそばであそんでいました。おかあさんは、よっちゃんのうつくしい着物きものっていられました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにもおまへ女口をんなぐちひと針仕事はりしごととほせないこともなからう、あれほどつてながら何故なぜつまらない其樣そんことはじめたのか、あんまりなさけないではないかときち我身わがみ潔白けつぱくくらべて、おしよ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
面白おもしろ床屋とこやがそこへ出來できました。腰掛こしかけはおうち踏臺ふみだいひ、むねけるきれおほきな風呂敷ふろしきひました。床屋とこやをつとめる伯父をぢさんのはさみは、祖母おばあさんたち針仕事はりしごとをするとき平常ふだん使つかはさみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこには、かおじわのったおんながすわって、針仕事はりしごとをしていました。子供こども二人ふたりばかりそばであそんでいました。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
はるゝにこたへんとすればあかつきかねまくらにひびきてむるほかなきおもゆめとりがねつらきはきぬ/″\のそらのみかはしかりし名残なごり心地こゝちつねならず今朝けさなんとせしぞ顔色かほいろわろしとたづぬるはゝはそのことさらにるべきならねどかほあからむも心苦こゝろぐるひるずさびの針仕事はりしごとにみだれそのみだるゝこゝろひとゞめていま何事なにごとおも
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おだやかな、つきのいいばんのことであります。しずかなまちのはずれにおばあさんはんでいましたが、おばあさんは、ただ一人ひとりまどしたにすわって、針仕事はりしごとをしていました。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ありましたれど赤子あかごせるものがないとかきませば平常つねこゝろ承知しようちがならずとほして針仕事はりしごとるものふたつかはしましたと得意顏とくいがほ物語ものがたとくかげなるこそよけれとかきゝしがあやしのことよとうたがむね相談さうだんせばやのこゝろえぬ花子はなこさま/″\の患者くわんじやはなし昨日きのふ往診みまひ同朋町どうぼうちやうとやらしやとけばつゆたがはぬ樣子やうすなりそれほどまでには
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ははは、めったにそとへもず、うちにいて、針仕事はりしごとをしていました。少年しょうねんは、そばで、ほんんだり、算術さんじゅつのけいこをしたりしました。はは仕事しごとができあがると、それをって、まちへゆきました。
お母さんのかんざし (新字新仮名) / 小川未明(著)