眞蒼まつさを)” の例文
新字:真蒼
かぜつめたさわやかに、町一面まちいちめんきしいた眞蒼まつさを銀杏いてふが、そよ/\とのへりをやさしくそよがせつゝ、ぷんと、あきかをりてる。……
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おどろいてあと見送みおくつてゐるりよ周圍しうゐには、めしさいしるつてゐたそうが、ぞろ/\とてたかつた。道翹だうげう眞蒼まつさをかほをしてすくんでゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あまあしがたち消えながらも何處どこからとなく私のはだを冷してゐる時、ふとあかい珊瑚の人魚が眞蒼まつさをな腹を水に潜らせる
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
一ぴきののみ眞蒼まつさをになつて、たゝ敷合しきあはせの、ごみのなかげこみました。そしてぱつたりとそこへたふれました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
彼れはこのひまに兄の方を見た。兄は眞蒼まつさをな額に玉のやうな冷汗を滴らしながら、いつの間にか椅子から立上つて、腕を組んだまゝぢつと死體を見詰めてゐた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
王樣わうさま眞蒼まつさをになつて、いそいで備忘録ノートブツクぢ、『判决はんけつは』と陪審官ばいしんくわんまをされました、ひくふるごゑで。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
きたときは、せたそら次第しだい遠退とほのいてくかとおもはれるほどに、れてゐたが、それが眞蒼まつさをいろづくころからきふくもて、くらなか粉雪こゆきでもかもしてゐるやうに、密封みつぷうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから……くもそこにお月樣つきさま眞蒼まつさをて、そして、ことがあるだらう……さうときは、八田潟はつたがたふなみなくびしてたれるつてふんです。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞蒼まつさをに痩せさらぼへたY子の顏の二つの眼だけに、凡ての生命が死に追ひつめられて立籠たてこもつたやうに見えた。彼女はその眼で少しでも生命のあるものは引よせて食はうとした。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
曉の眞蒼まつさをな空のうへに
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
……うすき、もみぢのなかを、きりひまを、次第しだいつきひかりつて、くもはるゝがごとく、眞蒼まつさをそらした常磐木ときはぎあをきがあれば、其處そこに、すつと浮立うきたつて、おともなくたまちらす。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見かへる鼻先きに眞蒼まつさをになつて痙攣的に震ふ兄の顏があつた。またゝきもせずに大きく彼れを見詰めてる兄の眼は、全く空虚な感じを彼れに與へた。彼れにはそれがうつろな二つの孔のやうに見えた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
楕圓形だゑんけいは、羽状複葉うじやうふくえふふのが眞蒼まつさをうへから可愛かはいはなをはら/\とつゝんで、さぎみどりなすみのかついで、たゝずみつゝ、さつひらいて、雙方さうはうからつばさかはした、比翼連理ひよくれんり風情ふぜいがある。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みまはかほを、突然いきなりつばめ蝙蝠かうもりばずに、やなぎのみどりがさらりとはらふと、えだなか掻潛かいくゞるばかり、しかも一段いちだんづいとたかく、めるやうなひろ河原かはらしたに、眞蒼まつさをながれうへ
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とき不思議ふしぎなものをました——そこひなきゆき大空おほぞらの、うへを、プスリとのみ穿うがつてあなからちこぼれる……おほきさはうです……蝋燭らふそくすこおほきいほどな眞蒼まつさをひかり
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
茶屋ちややあとの空地あきちると、ひとたけよりもたか八重葎やへむぐらして、すゑ白露しらつゆ清水しみづながれに、ほたるは、あみ眞蒼まつさをなみびせて、はら/\とがけしたの、うるしごとかげぶのであつた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せうまどからのぞいたきやくは、なにえなかつた、とひながら、眞蒼まつさをつてた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
屋根やね相向あひむかつて、眞蒼まつさをながれへだてた薄紫うすむらさきやまがある。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)