かく)” の例文
内山君うちやまくん足下そくか此位このくらゐにしてかう。さてかくごとくにぼくこひ其物そのもの隨喜ずゐきした。これは失戀しつれんたまものかもれない。明後日みやうごにちぼく歸京きゝやうする。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かくの如き商品の贋造は固より奸商のなす処深く咎むるに足らずと雖これを購うものの心理に至っては軽々に看過すべきに非ざるなり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時代も亦たかくの如し、時代には継承したる本然の性質あり、之に臨める至粋の入つて理想となるは、其本然の質を変ふるものにあらず。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
かくの如く山伏にはむづかしき事の御座候よし兼て師匠ししやうより聞及び候に私事は未だ若年じやくねんにて師匠の跡目あとめ相續の儀は過分くわぶんの儀なれば修驗のはふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何所へでもかくの如く平気に這入り込む程、世間の広い、又世間を自分のいえの様に心得ている男であるから、気にも掛けずに黙っていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり、極めて単純な自然物を或る一定の方法で配列すれば、そこにわれわれをかくまでも感動させるような力が生ずるのである。
美の切実性は日本からこそ起るのが当然である。われわれは今かくの如き芸術を求める。われわれの祖先は斯の如きものを遺した。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
かくの如くよの常なる判斷法より見るときは、皆是なる衆理想は同時に皆非なるに由なく、皆非なる衆理想は同時に皆是なるに由なからむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくの如く知と愛とは同一の精神作用である。それで物を知るにはこれを愛せねばならず、物を愛するのはこれを知らねばならぬ。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
詞のふしによるのみならず、その外見みえによりてこれに劣らず心に訴へ、早くあはれみを人に起さしめんとするもそのさままたかくの如し 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
探偵の事件には往々おう/\かくまでに意外なる事多し此一事は此後余が真実探偵社会の一員と為りてよりもおおいに余をして自らかえりみる所あらしめたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かくのごとく汝らも外は正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。蛇よ、まむしすえよ、なんじらいかで、ゲヘナの刑罰を避け得んや。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
箇月かげつらずの短時日たんじじつおいかくごとまへ好結果かうけつくわあらはしたとふことをかんがへると、國民自體こくみんじたい非常ひじやうよろこんでいことであらうとかんがへる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
学びし人とも覚えずしかるをなおよくかくの如く一吐一言いっといちげん文をなして爲永ためながおきなを走らせ式亭しきていおじをあざむく此の好稗史こうはいし
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
かくのごとく重大な事件である。この重大な事件を一向知らないでいる。鉱山の規則を見よ。鉱山の規則を御承知なければ私が読んで聞かせるが
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
しかるを何だ、あまり馬鹿々々しいとはういう主意を以てかくの如く悪口あっこうを申すか、この呆漢たわけめ、何だ、無礼の事を申さば切捨てたってもよい訳だ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かくの如きは女の道に違うものなり、女の道は斯くある可しと、女ばかりをいましめ、女ばかりに勧むるとは、其意を得難し。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かくの如くする時はたゞに料理通の旨味にして滋養に富める食品を得るのみならず、湖畔を逍遙する貴夫人も又鱷の游泳するを見て楽む事を得べく
年季職人ねんきしよくにんたいを組みて喧鬨けうがうめに蟻集ぎしうするに過ぎずとか申せば、多分たぶんかくごと壮快さうくわいなる滑稽こつけいまたと見るあたはざるべしと小生せうせい存候ぞんじそろ(一七日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
経済雑誌はかくの如き時に於て起てり。其批評的、破毀的はきてきの議論は善く其弊害をうがちしかば天下は勢ひ之を読まざるを得ざりき。是れ其理由の二也。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
天下てんか(一一)重器ちようき王者わうしや(一二)大統たいとう天下てんかつたふるかくごときのかたきをしめしたるなりしかるに(一三)ものいは
かくて両人ともからふじて世の耳目じもくまぬかれ、死よりもつらしと思へる難関なんくわんを打越えて、ヤレ嬉しやと思ふ間もなく、郷里より母上危篤きとくの電報はきたりぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
このことばしんをなした。翌々夜よく/\や秋田市あきたしでは、博士はかせてふ取巻とりまくこと、大略おほよそかくとほりであつた。もとよりのちはなしである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かくてその黄昏たそがれにいたり、源教げんけうは常より心して仏に供養くやうし、そこらきよらになしきやうたり。七兵衛はやきたりぬ。
いずれにしてもかくの如く観察し来る時は、この屍体飜弄なる夢遊状態の存在は疑う余地なきところにして、特に通夜の習慣及び火葬の流行以前には
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かかる読者は泥古残念帖にも誤られ易きものなれば、かくて念には念を入れて「念仁波念遠入礼帖ねんにはねんをいれちやう」を艸すること然り。
念仁波念遠入礼帖 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
或は代価も置かずして俵を奪ひ去るもあれど多人数なる故米商客こめあきうども之をささゆる事を得ず、かくの如くに横行して大阪中の搗米屋へ至らぬくまもなかりしが
此塲合に於ては此邊道路だうろなりしならん、此所より此所の間には當さに道路有りしなるべきなりなどと云ふを得れど、かくなる塲合は决して多からさるなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
靴と一処に御手許に届く小包は、この夏から秋にかけての、かくの如き花やかな夢と息苦しき心境の許に小生が採集しました昆虫類標本の全部であります。
女優 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ゆくものはかくごとし昼夜をわかたずと、支那の孔子様は云ったというが、全く水を見ていると心持がちがって来る。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かくの如く将門思惟す、およそ当夜の敵にあらずといへども(良兼は)脈をたづぬるにうとからず、氏を建つる骨肉なり
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
若しキリストが説かれし純道徳と称えらるる山上の垂訓がかくの如しであるならば其他は推して知るべしである
かくの如くして毎月数千の句を発表するのであるが、ことごとくそれらの句は金玉きんぎょくの名句であるということは出来ない。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
かくごときのもろもろ悪業あくごふ、挙げて数ふるなし。悪業を以ての故に、更に又諸の悪業を作る。継起してつひをはることなし。昼は則ち日光をおそれ又人および諸の強鳥を恐る。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
アヽ罪過が戯曲、小説に於ける地位、かくの如く重要なり。あへて罪過論をさうして世上のアンチ罪過論者にたゞす。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
しかしてかくの如き労働者は工場主側に於ては労働者の払底を告げざる限り永久にれられざるは勿論なり。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
しかるに希臘ぎりしや化物ばけものおほくはかくごと繼合つぎあはものである。ゆゑしん化物ばけものふことは出來できないのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
此遺書を発見する人は、小生が之を認め候時、かたはらの室にて妻の安眠し居たりしことを承知せられ度候。良心に責めらるる如き人はかくの如く安眠することはあらじと存じ候。
かくて此大劇場の觀棚さじきに對して立てる時、わが視る所は譬へば黒洞々こくとう/\たる大坑に臨める如く、僅に伶人席オルケストラの最前列と高き觀棚ロオジユの左右の端となる人の頭を辨ずることを得るのみ。
逆立さかだてこはい眼に睨まれ小さくなツて手を引きぬ嗚呼あゝ艶福なる者は必らずかくの如く不運なり女運なければ幸福なり讀者諸君それいづれをか執らんと思ひ玉ふナニ女運を右に幸福を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
かれ惡意あくいたぬかくごと残酷ざんこくはたらかされたのは、夫婦ふうふあひだにはわづかでも他人たにんることに金錢上きんせんじやう恐怖おそれいだかしめられたからであつた。女房にようばうはそれでもなゝかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さらば起たむ、この力ある身と肉を陣頭の戦渦にさらさむ、可ならずや、と。かくの如くして彼は、帝室劇詩人の栄職を捨て、父母を離れ、恋人に袂別べいべつして、血と剣の戦野に奮進しぬ。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
故ニかくノ如キ政府ヲ廃却シテ後来ノ安全ヲ固クスルハ、人ノ通義ナリ、また人ノ職掌ナリ。○方今我諸州まさシク此ノ難ニ罹レルガ故ニ、政府旧来ノ法ヲ変革スルハ諸州一般止ム得ザルノ急務ナリ。
検事はまず、事実は極めて明瞭なる事を述べ、ついで、かくの如き犯罪を行って、なお且つ天地に恥ずるを知らざる被告人の厚顔無恥をののしった結果、法律の許す範囲の極刑を求めたのであります。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
初雪の積りたるをそのまゝにおけば、再びる雪を添へて一丈にあまる事もあれば、一度ふれば一度掃ふ(雪浅ければのちふるをまつ) 是を里言さとことば雪掘ゆきほりといふ。土をほるがごとくするゆゑにかくいふなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
池田屋に赴かんとして、途中かくの如し、遺憾に堪へずと答ふるのみ
芸術はかくの如き動機において作ることになって始めて尊い。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
かくの如く僕の公憤心?は幼にして衆に優れていたらしい。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
かくしてめでたく骸骨島の冒険も終ったのである。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
晝既にかくの如きを——、夕暮が
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)