)” の例文
冬青樹あおき扇骨木かなめ、八ツ木斛もっこくなぞいう常磐木ときわぎの葉が蝋細工のように輝く。大空は小春の頃にもまして又一層青く澄み渡って見える。
写況雑記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ソフアの傍には、の鉢植、むかしのままに、ばさと葉をひろげて、乙彦が無心に爪で千切ちぎりとつたあとまで、その葉に残つてゐる。
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
お綱も自分と同じような縄目にかかるのを見ながら、数人の原士に蹴仆され、周馬だかお十夜だかにうしに締めあげられたまま
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうですね」鴨田はをしながら実直じっちょくそうな顔を出した。「六貫位はある山羊を呑んだとしまして、先ず三日でしょうか」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あげられしにぞ私し始め皆々ソレとつて馳付はせつき候ひしにおいたましや深何ヶ所もおひ給ひ御養生ごやうじやうかなふべくも候はず其時喜内樣には私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何うしやがると云う様な具合に手ンンに奪い返す所から一人と大勢との入乱れと為り踏れるやらうたれるやら何時いつの間にかしんで仕舞ッたんだ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
あたりをしずかに、おさえるばかり菊のかおりで、これをに持って参って、本堂に備えますと、かわりの花をさずかって帰りますね。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ばさっとしたの木の上からちらちらと灯が洩れていた。それはお志保の居間の小窓であった。幸いにもカーテンが半ば引かれてあった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
それが順々に大気都姫おおけつひめと、親しそうな挨拶あいさつを交換すると、呆気あっけにとられた彼のまわりへ、れ馴れしくに席を占めた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
途で一人の老婆が麺麭の実の頭に穴を穿うがち、に似た麺麭の葉を漏斗じょうご代りに其処そこへ突込み、上からコプラの白い汁を絞って流し込んでいた。
左樣さやうならばと挨拶あいさつすれば録之助ろくのすけかみづゝみをいたゞいて、お辭儀じぎまをはづなれど貴孃あなたのおよりくだされたのなれば、ありがた頂戴ちようだいしておもにしまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうすると、あとに残った三人の男たちはに妾の頭と、胴と、足を抱えて、上の方へ担ぎ上げながら、黙りこくって階段を昇りはじめたの。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
殺風景な下宿の庭に鬱陶うっとうしく生いくすぶったの葉蔭に、夕闇のひきがえるが出る頃にはますます悪くなるばかりである。何をするのもものうくつまらない。
やもり物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
庭はとてもせまい。さるすべりとと、つげの木が四、五本うわって、離れの塀ぎわにはりゅうのひげが植えてあった。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
の嶂壁の下に沿うて登る、この雪が終ると、峡谷が四岐する、向って左から二番目がよい、午前十時五十分、約二千八百四十米突の山脊つく。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
やがて主人はまくりをしながら茹蛸ゆでだこのようになって帰って来た。縁に花蓙はなございてある、提煙草盆さげたばこぼんが出ている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
暗い外で客と話している俥夫しゃふの大きな声がした。間もなく、門口かどぐちの葉がくるまほろで揺り動かされた。俥夫の持った舵棒かじぼうが玄関の石の上へ降ろされた。
赤い着物 (新字新仮名) / 横光利一(著)
たまたま下の洗面所に顔でも洗いにゆくと、目に入るものは、赤錆いろの鉄分の強い坪ばかりの池の水と、えきって生色のないの一、二本である。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
棒の「」から編み出された鐘巻流では必勝の手。さてそれからユルユルと、こうべを巡らすと右手を見た。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
石田氏はタジタジになり、坐りなおしてお辞儀をすると、太田夫人はの葉のような大きな手を振って
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ほんとうだわ。わたし、こんながきらいよ。」と、ふところをした竹子たけこさんも、いいました。おとこたちとはなれて、二人ふたりは、ならんでそらをながめていました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
門のきわには高いえてあって、その葉かげに腰をかがめておてつが毎朝入口をいているのを見た。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その創業わずかに五、六年に過ぎざれども、すでにその通用の政体をなせば、たとい政府の力をもって前の駕籠かごに復古せんとするも、決してよくすべからず。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
危ねえよ、どいたどいた、と云うどなり声でわれに返ると、右の脇をすれすれに、駕籠かごが走りぬけてゆき、そこが蔵前くらまえの通りであることに、おみきは気がついた。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家令はお邸の金を高い利で吉原のものに貸す。その縁故で彼等が行くと、特に優待せられるそうだ。そこでに吉原へ行った話をする。聞いていても半分は分らない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
諸士の出入りする通用門につづく築地塀ついじべいの陰。夕方。杉、などの植込みの根方に、中小姓税所郁之進さいしょいくのしんと、同じく中小姓池田、森の三人が、しゃがんで話しこんでいる。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
があけて、タフト氏が朝餐あさめしの席につくと、亭主はをしながら御機嫌伺ひに出て来た。
平生へいぜい尤も親しらしいかおをして親友とか何とか云っている人達でも、斯うなると寄ってたかって、ンにはら散々さんざ私の欠点を算え立てて、それで君は斯うなったんだ、自業自得だ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
十日たっても、二十日たっても、きみたちはただクモの迷路をうろつきまわるばかりだ。そのうちには懐中電灯の電池もつきてしまうだろう。いや、だいいち腹がへってくる。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから十一日には二度目の霜が降った。四度目の霜である十二月朔日ついたちは雪のようであった。そしてその七日八日九日は三朝続いたひどい霜で、や、つわぶきの葉がえた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と云いながら落着き払って出てきましたが、何処どこで買ったか膏薬こうやくを買って来まして、お浪の身体へベタ/\とたれもしない手や何かへも貼付け、四つ駕籠かご一挺いっちょう頼んで来て
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さうして殆んどまた容器の半分位にまで達した時、予は予の腹がひとりに極めて緩漫な運動をして縮んでゆくのを見た。同時に予の頭の中にある温度が大急ぎで下に下りて來るやうに感じた。
郁雨に与ふ (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
この男を、この部屋へやから外に出してはならない。博士はドアをうしに開いて廊下ろうかにとびだし、バタンとめた。カギがない。透明人間が内側うちがわから開けようとして、博士がにぎる把手とってをひねった。
手を後ろに縛られて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ソファの傍には、の鉢植、むかしのままに、ばさと葉をひろげて、乙彦が無心に爪で千切ちぎりとったあとまで、その葉に残っている。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
どぜう一尾いつぴき獲物えものい。いのを承知しやうちで、此処こゝむとふのは、けるとみづしづめたあみなかへ、なんともへない、うつくしいをんなうつる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あ、やッと帰ってきた!」思わず涼み台を離れると、トンとみせさきへ駕尻かごじりが下り、れを揃えた三挺のうちから
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめ、彼等はに弓矢をって、頭上の大空へ矢を飛ばせた。彼等の弓の林の中からは、勇ましいゆんづるの鳴る音が風のように起ったり止んだりした。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しいかし杉椿なぞの大木にまじって扇骨木かなめなぞの庭木さえ多年手入をせぬ処から今は全く野生の林同様七重八重ななえやえにその枝と幹とを入れちがえている。
亭のあるところまで行きつかないうちに力が抜けてしまい、どんと尻餅をついてそのままと相成ったのが、入口から入ったすぐのところのの葉かげ。
酒折さかをりみや山梨やまなしをか鹽山ゑんざん裂石さけいし、さし都人こゝびとみゝきなれぬは、小佛こぼとけさゝ難處なんじよして猿橋さるはしのながれにめくるめき、鶴瀬つるせ駒飼こまかひるほどのさともなきに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのほかにも桐や松や、柿や、椿、木犀もくせい山茶花さざんか躑躅つつじ、山吹のたぐいも雑然と栽えてあるので草木繁茂、枝や葉をかき分けなければ歩くことは出来ない。
薬前薬後 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
で妹子の蝶ヶ岳を擁している、近くは千人岳とて、多くの羅漢が如鬼如鬼にょきにょき並んでいるようだ。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
ながれめての方にて折れ、こなたのくが膝がしらの如く出でたるところに田舎家二、三軒ありて、真黒まくろなる粉ひき車の輪中空なかぞらそびえ、ゆんには水にのぞみてつき出したる高殿たかどの一間ひとまあり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しばふの上ですから、スケート場のようには、すべりませんが、それでも、だんだん座敷のえんがわから遠ざかって、築山のすそにしげっている、の木のほうへ、近づいていきます。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
に色々なお祝いの物をれて盛に芽出度がった上に、勃海使の何とかいう学者が名付け親となって、呉忠雄ごちゅうゆうと命名し、大袈裟おおげさな命名式を挙げて前途を祝福しつつ、唐津に上陸させて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこへ近所きんじょのおじさんが、ふところをしてとおりかかりました。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
短か布留ふる神杉かんすぎカンガルー春きたれりと人招くがに
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
目無めながたまうしにふたくごとく
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
見ると、庭には点々と血汐のあと、戸障子は八方へ無残に倒れ、甲比丹かぴたんの三次と荷抜屋の手下二人は、常木鴻山がうしくくし上げてしまった様子。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)