待遇もてなし)” の例文
なおも並木で五割酒銭さかては天下の法だとゆする、あだもなさけも一日限りの、人情は薄き掛け蒲団ぶとん襟首えりくびさむく、待遇もてなしひややかひらうち蒟蒻こんにゃく黒し。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何年の間という長い独棲生活ひとりぐらしに飽いていた私は、そうして母子の者の、出来ぬ中からの行きとどいた待遇もてなしぶりに、ついに覚えぬ
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
越して太田に泊る宿狹けれど給仕の娘摺足すりあしにてちやつた待遇もてなしなり翌日雨降れど昨日きのふの車夫を雇ひ置きたれば車爭ひなくして無事に出立す母衣ほろ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
とちやほや、貴公子に対する待遇もてなし服装みなりもお聞きの通り、それさえ、汗に染み、ほこりまみれた、草鞋穿わらじばきの旅人には、過ぎた扱いをいたしまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なしお待遊まちあそばせよと待遇もてなしぶりことばなめらかのひととて中々なか/\かへしもせずえだえだそふものがたり花子はなこいとゞ眞面目まじめになりてまをしてはを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
で、門衛にしても、その当時から朝夕の送り迎へに大臣としての待遇もてなしをすれば、勝田氏にしても矢張り黙つて大臣としての待遇もてなしを受けてゐたのだ。
その風采ふうさい餘程よほどちがつてるが相變あひかはらず洒々落々しや/\らく/\おとこ『ヤァ、柳川君やながはくんか、これはめづらしい、めづらしい。』としたにもかぬ待遇もてなしわたくししんからうれしかつたよ。
遣はし其後源八があそびに來りし時皆々折目高をりめだか待遇もてなしける故源八は手持てもち無沙汰ぶさた悄々すご/\と立歸り是は彼の文の事を兩親の知りし故なりとふか遺恨ゐこんおもひけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
案に相違! ながらく行方不明だった若殿のいどころを教えてくれた大恩人だというので、下へもおかぬ待遇もてなしぶり。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その友と我とを見るなざしはかどある如く覺えらるれど、姫が待遇もてなしのよきに、我等が興はそこなはるゝに至らざりき。
しかもかの駒込の奥深き一植木屋の離亭はなれ借りたる時ばかり、やさしくも親しき待遇もてなしけし事はあらず、と。我しづかに思へらく、しかるか、然るか、あゝれ実に然らむ也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さらいが済んだ後で、その青年はじめ二三の淑女だちとともに、庸三と葉子も、軽い夜食の待遇もてなしを受けて、白いテイブル・クロオスのかかった食卓のまわりに坐って
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
心のこもった待遇もてなしを受け、欝していた彼の心持ちもとみに開くを覚えたりして、愉快に一日を暮らしたが、客もおおかた散ったので彼もそろそろ帰ろうとして、尚夕桜に未練を残し
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
坂府は知っての通り芸子げいこ舞子まいこは美人ぞろい、やさしくって待遇もてなしいから、君から貰った三百円の金はちゃ/\ふうちゃにつかはたして仕方なく、知らん所へ何時いつまで居るよりも東京へ帰ったら
ちようど幸ひ、隣の貸家。あれを当分、御用に立てて、お食はこつちから運ばせて、夜分は、三を泊りに上げれば、万事お気楽お気儘で、御保養にならふにと。主翁が注意、行届いたる待遇もてなし振り。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
波の恵で待遇もてなしの岸へは著いたのだが。
本当に下にも置かぬ待遇もてなしでした。
他事よそながら、しんし、荷高似内のする事に、挙動ふるまいの似たのが、気とがめして、浅間しく恥しく、我身を馬鹿とののしって、何も知らないお京の待遇もてなしを水にした。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いろ/\のあつ待遇もてなしけたのちよるの八ごろになると、當家たうけ番頭ばんとう手代てだいをはじめ下婢かひ下僕げぼくいたるまで、一同いちどうあつまつて送別そうべつもようしをするさうで、わたくしまねかれてそのせきつらなつた。
大切に待遇もてなしけり夫より又半年程經過たち主用にて又々大坂へのぼり尼ヶ崎へも立寄たちよるべき事有りて金四百五十兩をあづかいそぎの旅なれば駕籠かごより乘掛のりかけが宜しと供人もわづか引連ひきつれてぞ登りける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勿体もつたいなきこととはりながららうへの待遇もてなしきのふにはず、うるさきとき生返事なまへんじして、をとこいかればれもはらたゝしく、おらぬものなら離縁りゑんしてくだされ、無理むりにもいてはとたのみませぬ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
主人がどうあろうと、我らにとってはかまわぬことじゃ。泊めてくれて、ご馳走してくれて、出立の際には草鞋わらじ銭までくれる。いやもう行き届いた待遇もてなし。それをただ我らは、受けておればよい。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
生きながら壁へ塗りこめてしまうのが、なんで待遇もてなしなものか。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
本當に下にも置かぬ待遇もてなしでした。
學びしかば平兵衞はじめ家内の者迄重四郎を先生々々といと叮嚀ていねい待遇もてなしうやまひ居たり或時みせ若者等わかものら打寄うちより彼の先生には劔術けんじゆつ早業はやわざたつし給ふと承まはり候が我々も親方の用事ある時は金子きんす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
寒国かんごくでは、うしてつたところがある。これはなつ待遇もてなしちがひない。贅沢ぜいたくなものだ。むかし僭上せんじやう役者やくしや硝子張がらすばり天井てんじやうおよがせて、仰向あふむいてたのでさへ、欠所けつしよ所払ところばらひをまをしつかつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はじめのあひだ日出雄少年ひでをせうねんわたくしたがひかほ見合みあはせてはこの不思議ふしぎなる幸運かううんをよろこび、大佐等たいさら懇切こんせつなる待遇もてなし感謝かんしやしつゝ、いろ/\と物語ものがたつてつたが、何時いつか十數日すうにち以來いらいはげしき疲勞つかれめに
「拙者、そなたをお連れして以来、失礼の待遇もてなしいたしましたかな?」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
意外なる待遇もてなしかな、かかりし事われは有らず。平時いつもはただ人の前、背後うしろわきなどにて、さまたげとならざる限り、処定めず観たりしなるを。おおいなる桟敷の真中まんなか四辺あたりみまわして、ちいさき体一個ひとつまず突立つったてり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)