だん)” の例文
その日東海坊は火伏せの行をしゆうして、火事早い江戸の町人を救ふと觸れさせ、人家に遠い道灌山を選んで、火行のだんきづかせました。
またうしてられる……じつ一刻いつこくはやく、娑婆しやば連出つれだすために、おまへかほたらばとき! だんりるなぞは間弛まだるツこい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大へん悔悟かいごしたような顔はしていましたが何だかどこかき出したいのをこらえていたようにも見えました。しょんぼりだんに登って来て
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
姜維きょういは、謹んで命をうけ、童子二名に、よろずの供え物や祭具を運ばせ、孔明は沐浴もくよくして後、内に入って、清掃を取り、だんをしつらえた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この画は平家の若い美くしい上臈じょうろうだんうらからのがれて、岸へ上ったばかりの一糸をも掛けない裸体姿で源氏の若武者と向い合ってる処で
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一段高いだんの上に、新月を頭上にけたように仰いで、ただひとり祈る白衣はくいの人物こそ、アクチニオ四十五世にちがいなかった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
法師はひじょうによろこびました。そして、しずかな夜などは、とくいのだんうら合戦かっせんうたっては坊さんをなぐさめていました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ゆうべ光吉こうきちにああはいったものの、母もあのつぎだらけの洋服ようふくで、わが子をはれがましい式場しきじょうだんの上に立たせたくなかった。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
もちろん義経の事蹟じせき、ことに屋島やしまだんうら高館たかだて等、『義経記』や『盛衰記』に書いてあることを、あの書をそらで読む程度に知っていたので
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
オラーフ・トリーグヴェスソンが武運つたなく最後を遂げる船戦ふないくさの条は、なんとなく屋島やしまだんうらいくさに似通っていた。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二つは低い石甃いしだたみだんの上に並んで立っていて春琴女の墓の右脇みぎわきにひともとまつが植えてあり緑の枝が墓石の上へ屋根のようにびているのであるが
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
やがて級長きゅうちょうれいをかけてみんながおじぎをしますと、先生せんせいは、じろりとだんうえってこっちをまわしました。みんなのむねなかはどきどきしたのです。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その笑いのあと、かれはほかの来賓たちのほうは見向きもしないで、くつ拍車はくしゃ佩剣はいけんとの、このうえもない非音楽的な音を床板ゆかいたにたてながら、だんにのぼった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
だんの上にはせきをまうけて神酒みきをそなへ、此町の長たるもの礼服をつけてはいをなし、所繁昌の幸福をいのる。
たけきつはものどもおほく一四六鼇魚かうぎよのはらにはぶられ、一四七赤間あかませき一四八だんの浦にせまりて、一四九幼主えうしゆ海に入らせたまへば、軍将いくさぎみたちものこりなく亡びしまで
まるで仁太が総代ででもあるように、仁太の顔にむかっておじぎをしたようなかたちで、だんをおりた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
人びとがへとへとに疲れて、やっと西門外へ往ったときには、道人はもう方丈ほうじょうだんを構えていた。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
午後零時四十分、峰の上に立つて見ると、其處は可成りに廣いひらで、未だ灌木帶の區域にも達せず、大樹がすく/\と立ち列んで、いづれが最高のだんか見透しする事も出來ない。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
大將となし一ノ谷の戰ひに平家の十萬騎を討平うちたひらなほまたすゝんで屋島やしまだんうらの戰ひに平家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
平生の志の百分の一も仕遂しとげる事が出来ずに空しくだんうらのほとりに水葬せられて平家蟹へいけがに餌食えじきとなるのだと思うと如何にも残念でたまらぬ。この夜から咯血かっけつの度は一層はげしくなった。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
はいよ/\うれしくてたまらず、川面かわづらは水も見えぬまで、端艇ボート其他そのたふねならびて漕開こぎひらき、まは有様ありさま屏風びやうぶに見たる屋島やしまだんうら合戦かつせんにもて勇ましゝ、大尉たいゐ大拍手だいはくしゆ大喝采だいかつさいあひだ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
そしてにははなるたけひろくとつて芝生にする。花だんをこしらへる……
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
せいマリヤ君にまめなるはしただんかいえむ日も夢みにし
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
茶立口、上だんふちつきの床、洞庫どうこ釣棚つりだな等すべて本格。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
懴悔のだんかうしんの心の
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
だんちるやうにりたときくろ狐格子きつねがうし背後うしろにして、をんな斜違はすつかひ其處そこつたが、足許あしもとに、やあのむくぢやらの三俵法師さんだらぼふしだ。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は会釈えしゃくしてだんを下り拍手はくしゅもかなり起りました。異教徒席の神学博士たちももうこれ以上論じたいような景色も見えませんでした。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
血みどろな修行のだんとしてきた、叡山に対して、永遠の訣別けつべつを告げていたのであったが、送る人々は、なにも気づかなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のずばぬけて大きいからだが、このやぶれ洋服ようふくだんの上に立つすがたと、あのキチンとしたりっぱな中条ちゅうじょうだんの上へあがったすがたとが見える。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
柵を開き、拜殿の大海老錠おほえびぢやうを拔くと、中には立派なだんが据ゑてあり、とびらを開くと、等身よりやや小さいと言ふ、歡喜天くわんきてんの像が安置してあるのでした。
さて、ご主君しゅくんは、そのほうのびわの名声めいせいをおききになり、今夜こんやはぜひ、そのほうの、とくいのだんうらの一きょくをきいて、むかしをしのぼうとされている。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ぼく歴史れきしきだ。やはりうみ学校がっこう読本とくほんにも、だんうら合戦かっせんのことがいてあるかえ。」とききました。
海の少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よし、よし、おい、木戸、仙場甲二郎、そのだんのうえにある鰐魚を二つとものけてみろ。ああ、のけたか、のけたらそこに、穴が二つあるはずだが、どうだ」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だんの上にはせきをまうけて神酒みきをそなへ、此町の長たるもの礼服をつけてはいをなし、所繁昌の幸福をいのる。
朝倉先生がだんをおりると、つぎは来賓の祝辞だった。次郎はさすがに胸がどきついた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
志戸・八島やしまにいたって多くの武勇の士たちが魚の餌食となり、さらに赤間あかませきだんうらに追いつめられて、幼君安徳天皇が入水されたので、平家の武将たちもここにのこらずほろびてしまったが
そして摘草つみくさほど子供こどもにとられたとふのを、なんだかだんうらのつまり/\で、平家へいけ公達きんだち組伏くみふせられ刺殺さしころされるのをくやうで可哀あはれであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手下の者から、念珠コンタツをうけとったかれは、それをくびへかけ、胸へ、白金はっきんの十字架をたらして、しずしずとだんの前へすすんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士は笑って相手にしないでだんを下りて行くねえ、子供の助手は少し悄気しょげながら手をこまねいてあとから恭々しくついて行く。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大げんかんの前、召使めしつかいの案内あんない、長いろうか、大広間、そして、しんといならぶ人びとの前、そこで法師は昨夜とおなじように、だんうら物語ものがたりをひきました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
だんの上に載せてからで御座います。壇の灯が棺の後ろへチラと見えたので、おや變だなと思ひました」
さてだん中央まんなかに杉のなま木をたてゝはしらとし、正月かざりたるものなにくれとなくこのはしらにむすびつけ又はつみあげて、七五三しめをもつて上よりむすびめぐらしてみののごとくになし
そこで博士は、うやうやしくだんの前にいって礼拝をし、それから立上った。博士の考えでは、それから聖者に後向きとなって聴衆の方を向いて座し、それから肉体と心霊の分離術ぶんりじゅつに入るつもりだった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僧が手をひいて、だんの前へ、坐らせた。小さな彼の手は、彼がするともなく、また、人が教えるともなく、ひたと、合掌して、つむりをすこし下げた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高信たかのぶさんは、南祖坊なんそばうだんはしに一いきしてむかうむきに煙草たばこつた。わたしは、龍神りうじんしやしつゝも、大白樺おほしらかばみきすがつて、ひがしこひしい、ひがしみづうみ差覗さしのぞいた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さてだん中央まんなかに杉のなま木をたてゝはしらとし、正月かざりたるものなにくれとなくこのはしらにむすびつけ又はつみあげて、七五三しめをもつて上よりむすびめぐらしてみののごとくになし
三日前に越前屋の一の倉にだんを拵へて、大膳坊と蝠女ふくぢよの二人、其處に籠つたきりの祈祷が始まりましたよ。その一の倉といふのは、雜用倉で、あまり大したものは入つちや居ません。
「はい、ここはヘクザ館の内部でも、一番聖なる場所としてあります。されば、初代院長様の聖骨せいこつも、この塔のなかにおさめてあるのでございます。あれ、ごらんなさいませ。あのだんのうえにおさめてあるのが、その聖骨のつぼでございます」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
上人は、いつも講義をする道場のだんにおごそかに坐り、月輪殿は、そのわきへ、さらに厳粛な面持おももちをして、坐っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とづいとつと、逆屏風さかさびやうぶ——たしかくづかぜみだれたの、——はしいて、だん位牌ゐはい背後うしろを、つぎふすまとのせまあひだを、まくらはうみちびきながら
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)