黙言だんまり)” の例文
旧字:默言
世渡よわたりやここに一にん、飴屋の親仁は変な顔。叱言こごとを、と思う頬辺ほっぺたを窪めて、もぐもぐと呑込んで黙言だんまりの、眉毛をもじゃ。若い妓は気の毒なり、小児たちは常得意。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供に向ってもがみがみ叱る性質たちで、一人の清吉という息子があったが、母親の気質きだてに似ないで、父親のように黙言だんまりな、少しぼんやりとした大柄な子供であった。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
珠運様も珠運様、余りにすげなき御言葉、小児こどもとっ小雀こすずめを放してった位に辰を思わるゝか知らねどと泣きしが、貴下あなたはそれより黙言だんまりで亀屋を御立おたちなされしに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あわせをしゃんと、前垂がけ、つまを取るのは知らない風に、庭下駄を引掛ひっかけて、二ツ三ツ飛石を伝うて、カチリと外すと、戸を押してずッと入る先生の背中を一ツ、黙言だんまりで、はたと打った。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)