黒木くろき)” の例文
あるとき、黒木くろき近衛師団長の検閲がおこなわれた。私はひとり、青山あおやま練兵場に引きだされた。師団長はじめ参謀らがならんでいた。
私の歩んだ道 (新字新仮名) / 蜷川新(著)
承久じょうきゅうノ乱で、この佐渡へ流され給うた順徳じゅんとく上皇の黒木くろき御所ごしょやら、日蓮上人が氷柱つららの内に幽居した塚原ノ三昧堂まいどうなどへも、まいってみた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御主人はうしろ黒木くろきの柱に、ゆっくり背中を御寄せになってから、寂しそうに御微笑なさいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やみれた蛾次郎のひとみには、ようようそこの屋根うらが、怪獣かいじゅうのような黒木くろきはりけまわされてあるのがっすらわかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言明どおり、能登は朝に夕に、いや時刻さだめず、黒木くろき御所ごしょを見廻りにくる。時にはわざとらしく「……エヘン」と咳払せきばらいなどして通った。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山の五合目虚無僧壇こむそうだんとよぶところ、暗緑色あんりょくしょくかいへだてた向こうと、丸石まるいしたたみあげたとりで石垣いしがき黒木くろきをくんだ曲輪くるわ建物たてものらしいのがチラリと見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いえ、決して世辞ではござりませぬで、御賞美の余り、もう一つ、黒木くろき御書院ごしょいんへ置く陶器をという御懇望、ほかならぬお方のおねだり、いやとは殿も仰せ兼ねます。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)