鴻毛こうもう)” の例文
生命いのちかろんずること鴻毛こうもうのごとく、約を重んずることかなえに似たり。とむずかしくいえばいうものの、何の事はがあせん、人殺しの飯事ままごとだ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
因幡いなば但馬たじま播磨はりま、備前の四州にわたる街道の不安をのぞき、その上、幾多の人命を救うことになれば、自分の一命のごときは鴻毛こうもうよりも軽い、まあ明日あしたの夕方までは
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにがおかしい、義に当面すれば、身命を鴻毛こうもうよりもかろしとするのが、侍の本分ではないか」
そのいのちを、鴻毛こうもうよりも軽んじて、主君の馬前、乱軍のちまたを、何十遍となく往来したというさむらいでも、居を家に、身を平時にかえした日常では、やはり戦陣中のようにはゆかない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鴻毛こうもうの一命をし、天下のおん為めぞと、身に過ぎたるお使いに立ち、計らずも、ありがたき御承諾のおことばを賜わりまして、長途の艱苦かんくも打ち忘れ、何やら身もうつつか夢かと疑われて
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、主君のためにはいのちを鴻毛こうもうより軽んじる。しかも華やかにいさぎよく。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)