鳴咽おえつ)” の例文
どこからか、鳴咽おえつのこえがもれた。するとあっちでもこっちでも、すすりなきのこえが起った。拳でなみだをはらっている者もある。感激のなみだだ!
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
椅子いすがひっくり返った。とびらいた。シャツ一つの素足の母が、すすり泣きながら彼の首に飛びついてきた。彼女は熱で焼けるようになっていた。息子を抱きしめて、絶望の鳴咽おえつのうちに訴えた。
海波かいは鳴咽おえつあか浮標うき、なかにばめる
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鳴咽おえつする柿丘の声と、みだらがましい愛撫あいぶの言葉をもってなぐさめはじめた雪子夫人の艶語えんごとをまま、あとに残して、僕はその場をソッと滑るように逃げだすと、跣足はだしで往来へ飛びだしたのだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)