馬子唄まごうた)” の例文
やがて長閑のどか馬子唄まごうたが、春にけた空山一路くうざんいちろの夢を破る。憐れの底に気楽な響がこもって、どう考えてもにかいた声だ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊那の谷からの通路にあたる権兵衛ごんべえ街道の方には、馬の振る鈴音に調子を合わせるような馬子唄まごうたが起こって、米をつけた馬匹ばひつの群れがこの木曾街道に続くのも、そういう時だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
節廻しがすべて艪拍子に連れて動いて、緩く、哀調になっています。信濃のは馬子唄まごうたですから、上り下りの山路やまみちの勾配から、くつわの音、馬の歩調に合せて出来上ったものなのです。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
しばらくすると朗々ほがらかんだ声で流して歩く馬子唄まごうたが空車の音につれて漸々ぜんぜんと近づいて来た。僕は噴煙をながめたままで耳を傾けて、この声の近づくのを待つともなしに待っていた。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そらつきのうらをくとおもふあたりはるか馬子唄まごうたきこえたて。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬子唄まごうた鈴鹿すずか越ゆるや春の雨
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)