馬喰ばくろ)” の例文
馬喰ばくろ町、小伝馬こでんま町、鉄砲町、石町と、新開の大通りで街の品位はずっと低く、徳川時代の伝馬町の大牢の跡も原っぱで残っていた。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
私の生れたうまや新道、または、小伝馬町こでんまちょう大伝馬おおでんま町、馬喰ばくろ町、鞍掛橋くらかけばし旅籠はたご町などは、旧江戸宿しゅく伝馬てんま駅送に関係がある名です。
葺屋ふきや町の両芝居から、馬喰ばくろ町、浜町、そこで飛火をして深川の熊井町、相川町、八幡宮の一の鳥居を焼き、仲町辺まで一帯を灰にした。
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
馬喰ばくろ町の大阪屋長兵衛という四十男が四升余り、千住かもん宿の方からきた市兵衛と名乗るのが、万寿無彊盃で三杯飲んだというから合計四升五合。
酒渇記 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
かいくだされましと言に道具屋ハイ/\家主いへぬしひろ次郎と申ますと肩書かたがきにして渡しければ直八是で宜と其儘馬喰ばくろ町の旅宿りよしゆくへ歸りて長兵衞ならび村名主むらなぬし源左衞門に向ひ下谷山下やましたにて見當みあたりし脇差わきざしの事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれは皀莢さいかち小路の家へはゆかず、馬喰ばくろ町の宿屋へ草鞋わらじをぬぎ、そこから大助に手紙を持たせてやった。風呂を浴びて、夕食のはしを手にしたところへ大助は来た。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
馬喰ばくろ町二丁目のその太物問屋に十一から二十二まで勤めた、七つの年おふくろに死なれ九つの秋にお父っさんが死んだあとおふくろの兄に当る五兵衛という人の手で育てられ
金五十両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おらあな、馬喰ばくろ町の文華堂っていう瓦版屋の、木内桜谷おうこくってえ者だ」と男は云った
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やめてから矢の倉の鳥万、馬喰ばくろ町の平松、神田の翁屋おきなやと、勤めてはやめ勤めてはやめ、みんな三十日そこそこしか続かず、十六の春ようやく、こうじ町平河町の稲毛という店へ住込みでおちつきました
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)