香炉かうろ)” の例文
旧字:香爐
少女はめいを失つたのであらうか? いや、少女の鼻のさきには、小さい銅の蓮華れんげ香炉かうろに線香が一本煙つてゐる。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
香炉かうろを手に取揚とりあげ、ぎんさじいたかうを口へ入れ、弥
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぬかづくや、きん香炉かうろの薄けぶり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
香炉かうろとしつつくもある。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しかし透き見をすると言つても、何しろ鍵穴を覗くのですから、蒼白い香炉かうろの火の光を浴びた、死人のやうな妙子の顔が、やつと正面に見えるだけです。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
文月ふづき香炉かうろに濡れてけぶる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
書物は香炉かうろの火の光に、暗い中でも文字だけは、ぼんやり浮き上らせてゐるのです。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
をろがめば香炉かうろの火身に燃えて
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この意味ではルナアルは暫く問はず、香炉かうろの香を帯びたジツドにもせよ、町の匂ひのするフイリツプにもせよ、多少はこの人通りの少ない、陥穽かんせいに満ちた道を歩いてゐるのであらう。
あらたなる大海おほうみ香炉かうろ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)