飛退とびしさ)” の例文
樹島は、ハッと、真綿に据えたまま、蒼白あおくなって飛退とびしさった。そして、両手をついた。指はズキズキと身にこたえた。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と是れからすそ端折はしょって飛出したが、此方こちら余程よっぽど刻限が遅れて居ります。お話は元へ戻りまして、お繼が親の敵と切りかけました時は水司又市も驚いて、一間ばかり飛退とびしさって長いのを引抜き
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
飛退とびしさ低頭平身ていとうへいしんしてうやまひ私儀は赤川大膳とてもと水戸家みとけの藩中なれば紀伊家に此御短刀の傳はりし事は能々よく/\知れり斯る證據のある上は將軍の御落胤ごらくいんに相違なし斯る高貴かうきの御方とも存じ申さず無禮の段恐れ入り奉りぬ幾重いくへにも御免おんゆるしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と正吉が飛退とびしさった。途端に白布しろぬのの包は、草に乗って一つ動く。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぴき、ハツと飛退とびしさつたが、ぶつ/\といふ調子で
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)