類稀たぐいまれ)” の例文
どっちかといえば細くはあったが、そうして何んとなく三白眼式で、上眼を使う癖はあったが、その清らかさは類稀たぐいまれで、近づきがたくさえ思われた。
怪しの館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
美女お寿は、類稀たぐいまれな姿と顔形に恵まれながら、何の因果か赤くて縮れた毛を持っているので有名だったのです。
其処そこで三百円という類稀たぐいまれなる慰労金まで支出したのは、升屋の老人などの発起ほっきに成ったのである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかも出世魚と申す鯉魚りぎょの、お船へ飛込みましたというは、類稀たぐいまれな不思議な祥瑞しょうずい
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
現代に於いてさえこう云う組み合わせの性生活は類稀たぐいまれなことゝして世の視聴をくのであるから、此の老歌人よりなお八九歳の高齢で、五十も歳下な婦人を妻にしていた国経のようなのは
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
誰言うとなく奉ったのが即ちこの、世にも類稀たぐいまれなぐずり松平の異名いみょうです。
若い男が破舟やれぶねの中へ這入はいってしきりに竿さおを動かしている。おいこの池は湯か水かと聞くと、若い男は類稀たぐいまれなる仏頂面ぶっちょうづらをして湯だと答えた。あまりいやな奴だから、それぎり口をくのをやめにした。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誠に類稀たぐいまれなるものといわねばならぬ。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)