願掛がんか)” の例文
土着の人は、何事の願掛がんかけもかなうとかいって、可笑おかしいことには線香を上げるかと思うと、生魚を上げたりして、その信仰に神と仏の区別をもっていないようです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにか願掛がんかけをするときに、そういう約束を神さまにむかってする者が多くなっているようだが、村々のほうでは、もとは千度参せんどまいりと称して、たくさんの人が言いあわせて
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あまり多愛たあいのないおはなしばかりつづきましたので、今度こんどすこしばかり複雑こみいったおはなし……一つ願掛がんかけのおはなしいたしてましょう。この願掛がんかけにはあまり性質たちいのはすくなうございます。
「あの妹夫婦の願掛がんかけと申せば、武門の外に生きたい、人を楽しましめる芸道のみちに立ちたい、ということであろ。——このごろは口に出さぬが、いぜんにはよく申しておった」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つの願掛がんかけをもって始まり、一つの御礼申しをもって終結するというような一回ごとの交渉は、無始の昔からの信頼に根ざした、いわゆる固有宗教の教理とは合致せぬのみならず
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
願掛がんかけがあって、大山の石尊様せきそんさまへお詣りに行ってきたんですからね、冗談じゃありませんや、神詣りに行った留守にまる焼けになっちまうなんて、そんな箆棒べらぼうなチョボイチがあるもんじゃねえ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)