降口おりぐち)” の例文
ここにはもやぐいとホッ立て小屋がある。毛馬村の船着と見て、七名は、ばらばらとそこへ先廻りして降口おりぐちやくして待っていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神中はすぐって障子しょうじを開けて出た。彼も神中を送ろうと思って起ったが、すぐ障子が締ってもう梯子段はしごだん降口おりぐち跫音あしおとがしだしたので坐った。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
の一端は穴の降口おりぐちとも思しき処の岩角に結び付けられて、の端は暗い底の方に長く垂れていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ラムネがもらへるなら姉さん下へさういつて下されといふ故兼吉すぐに廊下に出て降口おりぐちよりあつらへるを、かの六畳からお万が見ゐたり、二人は一間に籠りゐて、ラムネのしをば兼吉が取入れつつ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
便所は裏二階の降口おりぐちを左に往って、その往き詰めを右に折れた処にあった。縁側えんがわからその便所へは一跨ひとまたぎの渡廊下わたりろうかがついていて、昼見ると下には清水の流れている小溝があって石菖せきしょうなどが生えていた。
料理番と婢の姿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)