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闃然
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げきぜん
ふりがな文庫
“
闃然
(
げきぜん
)” の例文
午前三時、四丁目の交叉点に立って新橋の方を眺めると、街燈の光も淡くほのかに、銀座の
峡
(
はざま
)
は深沈たる闇の中に沈み、
闃然
(
げきぜん
)
とものの音もない。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
まずへっついの影にある
鮑貝
(
あわびがい
)
の中を
覗
(
のぞ
)
いて見ると案に
違
(
たが
)
わず、
夕
(
ゆう
)
べ
舐
(
な
)
め尽したまま、
闃然
(
げきぜん
)
として、怪しき光が引窓を
洩
(
も
)
る
初秋
(
はつあき
)
の日影にかがやいている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
室内は
闃然
(
げきぜん
)
として、人の呻吟する声その他の物音を聞かざりき。扉をこじ開けたる時は何人もあらざりき。窓は前側のものも後側のものも鎖して内より鑰を卸しありたり。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
さ、さ、とお絹の
褄捌
(
つまさば
)
きが床を抜ける冷たい夜風に聞えるまで、
闃然
(
げきぜん
)
として、袖に褄に散る
人膚
(
ひとはだ
)
の花の香に、穴のような
真暗闇
(
まっくらやみ
)
から、いかめの鬼が出はしまいか——私は胸を
緊
(
し
)
めたのです。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
闃然
(
げきぜん
)
たる
午時
(
ひるどき
)
の街を行く人は、
綫
(
すぢ
)
の如き陰影を求めて夏日の烈しきをかこつと
雖
(
いへども
)
、これをこの火の海にたゞよひ、硫黄氣ある毒燄を呼吸し、幾萬とも知られぬ惡蟲に膚を噛まるゝものに比ぶれば
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
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四辺
(
あたり
)
は益〻静かである。森閑
闃然
(
げきぜん
)
として音もない。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
近頃は両側へ
長家
(
ながや
)
が建ったので昔ほど
淋
(
さみ
)
しくはないが、その長家が左右共
闃然
(
げきぜん
)
として
空家
(
あきや
)
のように見えるのは余り気持のいいものではない。貧民に活動はつき物である。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
闃
漢検1級
部首:⾨
17画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“闃”で始まる語句
闃
闃寂
闃乎
闃寂閑
闃々沈々