かけがね)” の例文
守は問題の窓の所へ歩いて行って、すぐその前の板塀についているくぐをガタガタ云わして見たが、内部からのかけがねに異状はなかった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たゞかけがねがかけてあるきりの門を這入ると、私は圍みの中の空地あきちの眞中に立つてゐた。そこは半圓形に森の樹が伐り拂つてあつた。
彼は爪先つまさきで伸び上がって、一階の戸口や窓にさわってみた。けれどもそれらは皆閉ざされて、かけがねや錠でしめ切ってあった。
私は戸に南京ナンキン錠とかけがねとを取りつけた。仕事をしていると男、女、娘、きたない顔をした子供達等が立ち並んで、私を凝視しては感嘆これを久しゅうする。
そしてついに彼がはいろうと意を決したのは、彼女が思い切ってかけがねをしてしまった時であった。
すると、もう子供たちがやって来て、かけがねをゆすぶっている。下のほうをこじけようとする。はじめは遠慮がちに、だが、しまいには、いまいましそうに、木履きぐつり散らす。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
彼は客の旦那衆に対し物しずかに普通に話した。それでいて旦那衆は馥郁ふくいくとした滋味じみと馥郁とした暖味とに包まれるばかりでなく、心の底から世間の用心のかかけがねを外ずして打ち解けられた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
否、外のてつくやうな嵐——吠え猛ける暗黒——の中から、かけがねはづして這入つて來て、私に前に立つたのは、セント・ジョン・リヴァズだつた。
アンジョーラは戸に横木を入れ、かけがねをし、錠前と海老錠えびじょうとの二重の締まりをした。その間も、兵士らは銃床尾で工兵らはおので、外部から激しく戸をたたいていた。
私に出来た唯一のことは、横浜へ行って南京ナンキン錠とかけがねとを買い、それを自分で取りつけること丈であったが、同時にアルコール、壺、銅の罐等を手に入れるのも、たしかに一と仕事であった。
内部にとびらが一つあって通じ合っていた。クリストフは我知らず、ザビーネの室の方にかけがねがおろしてあることを確かめた。彼は床にはいって、眠ろうとつとめた。雨が窓ガラスを打っていた。
彼は戸のかけがねを引く。まっているのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
彼女はそれに手を触れず、後ろを振り返りもせず、家の中に逃げ込んで、すぐに踏段の所の入り口に、鎧戸よろいどをしめかんぬきをさしかけがねをした。彼女はトゥーサンに尋ねた。
「牧師といふ奴は、始終しよつちゆう奇體きたいな事件には持ち出されます。」再びかけがねが音を立てた。
あなぐらから屋根裏の部屋まで家中をトゥーサンに見回らせ、自分の室に閉じこもり、とびらにはよくかけがねをし、寝台の下までのぞき込んで、それから床についたが、よく眠れなかった。