かざり)” の例文
「この間から、それが紛失して、かざり屋へ頼んでは居るが、お屋敷方の用事となると、うるさがつて、容易には來てくれないのぢやよ」
番頭は下へ降りて行ったが、やがて引っ返して来て、去年の暮の二十八日に隣りちょうの豊吉というかざり職人が一度たずねて来たのを女中の一人が知っている。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
近くのかざり屋の主人はそう言って、「これを何かのかざりにすると儲かるのだ。このまま、これをにかわで煮込むのだ。」
不思議な魚 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
案の定一見鍛冶かじ屋のごとく、時計師の仕事場のごとく、無数のかざり職の道具、ふいご、小型の電気炉等々、夫人の居間鏡台の陰に作られた、ドラーゲ公爵家同様
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
かざりの職人ですよ。つまり鳶人足なんですが、今ではごたぶんに洩れず半分は失業してると同じことで……」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
小さなかざり職人が必要に迫られ、小粒金を鋳つぶして材料に使うことがある、みつかれば通用金をつぶした罪で罰せられる。綿文では小僧を使って、殆んど公然と小判を削っている。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
若い人足共の喧嘩の事、人出の多かった事、二十台あまりの神輿が並んだ時の立派さ、夕日が照り返して、かざりの金物がピカ/\と光って綺麗に見えた事などを幾度も/\繰り返した。
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
塗師ぬしかざり職人、磨師みがきし石工いしくなども二十五人一組の定めであった。むろん一同は山へ上がったが最後、かしらだったものは町小屋、諸職人は下小屋したこやに寝とまりして、竣工しゅんこうまで下山を許さないのです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かざり屋に金のあるのを知つて居るのは、隙間から覗く谷五郎の外になく、その上、あの娘のゆかりに當つて、ひどく父親に怒られて居るらしい
そうして、かれら七人のなかで雪達磨の一件に直接関係のあるのは、かのかざり職の豊吉と源次と、近江屋九郎右衛門と石坂屋由兵衛との四人であることが判った。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仏蘭西生まれの夫人の父親は村のかざり職であった。錺屋の父親を持っている以上、もちろん大人にも盗品のくび飾りや腕環うでわ類の分解なぞは、造作なくできるであろう。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
器用で覺えたかざり職になり、フイゴとタガネに暮しを托して、近頃では妙に工面が良いと言はれるほどになつてゐたのです。
父親は村のかざり屋、商売に失敗して村にいたたまれなくて、リヨン市では洗濯屋をしてたはずである。食うや食わずの貧しさから、この女は十四の年から踊り子に出た。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そのしもた屋の中に、油障子を開けると、すぐ仕事場になり、奧へ二た間續く構へが、かざり職田屋三郎兵衞の家でした。
それを搜し出すまでには、半日かゝりましたが、それでも竹町でかざり職人になつてゐる、正直者らしい喜太郎に逢つた時は、平次は何んとなくホツとした心持になつてゐたのです。
あの金の環を受取った時、すぐ寸法を取って、町内のかざり屋に頼んで手に入れたんだ。とんだ役に立ったよ。もっともあれは金無垢きんむくだったが、おれは貧乏だから鉄で間に合せたよ。
天草あまくさで習ったオランダ風のかざりを応用して、精巧な鈴を作ることを工夫し、芳村道斎どうさいと名乗って江戸中の好事家こうずかの人気を集めましたが、名人業であまりお宝にはならず、年中貧乏を看板に、女房一人
天草で習つたオランダ風のかざりを應用して、精巧せいかうな鈴を作ることを工夫し、芳村道齋と名乘つて江戸中の好事家かうずかの人氣を集めましたが、名人業めいじんわざであまりお寶にはならず、年中貧乏を看板に、女房一人
特別に頼んでかざり屋に打たせたものでせう。