錦衣きんい)” の例文
一身の小楽に安んじ錦衣きんい玉食ぎょくしょくするを以て、人生最大の幸福名誉となす而已のみあに事体の何物たるを知らんや、いわんや邦家ほうか休戚きゅうせきをや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
八年春三月、工部尚書こうぶしょうしょ厳震げんしん安南あんなん使つかいするのみちにして、たちまち建文帝に雲南にう。旧臣なお錦衣きんいにして、旧帝すで布衲ふとつなり。しんたゞ恐懼きょうくして落涙とどまらざるあるのみ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
真情をうつさば、一葉の戯著といふともなどかは価のあらざるべき、我れは錦衣きんいを望むものならず、高殿たかどのを願ふならず、千載せんざいにのこさん名一時のためにえやは汚がす
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そしてはや、楽府がくふの仙楽と満庭の万歳のうちに式を終って、今しも袞龍こんりょう錦衣きんいのお人影が、侍座じざ玉簪ぎょくさんや、侍従の花冠はなかんむりと共にたま椅子いすをお立ちあらんと見えたときであった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)