銀椀ぎんわん)” の例文
真夜中頃に、枕頭まくらもと違棚ちがいだなえてある、四角の紫檀製したんせいわくまれた十八世紀の置時計が、チーンと銀椀ぎんわん象牙ぞうげはしで打つような音を立てて鳴った。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
えがけども成らず、描けども成らず」と丸き男は調子をとりて軽く銀椀ぎんわんたたく。葛餅をたる蟻はこの響きに度を失して菓子椀の中を右左みぎひだりへけ廻る。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と女はうたいおわる。銀椀ぎんわんたまを盛りて、白魚しらうおの指にうごかしたらば、こんな声がでようと、男はきとれていた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)