鉄線はりがね)” の例文
旧字:鐵線
両岸から鉄線はりがねったあぶなげな仮橋が川をまたげて居る。橋の口に立札がある。文言もんごんを読めば、曰く、五人以上同時にわたる可からず。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
で、早速の気転で、お客の重みで寝台ねだいが押し潰れないやうに、鉄線はりがねでもつて、方々を蜘蛛の巣のやうにからめにかゝつた。
煉るものは鉄線はりがねの玉子廻しかさもなければおはしを五、六本片手に持ってよく丹念に掻き廻わしてもいいのです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
竿を手にして、一心に魚のシメこみうかがった。魚はかたの如くにやがて喰総くいしめた。こっちは合せた。むこうは抵抗した。竿は月の如くになった。いと鉄線はりがねの如くになった。水面に小波さざなみは立った。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鉄線はりがねふくろ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
阪を上り果てゝ、かこいのトゲつき鉄線はりがねくぐり、放牧場を西へ西へと歩む。赭い牛や黒馬が、親子友だち三々伍々、れ離れ寝たり起きたり自在じざいに遊んで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのとつの方は鉄線はりがねを寄せたのですかられにでも出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
可なりの大川、深くもなさそうだが、川幅一ぱい茶色の水が颯々さあさあと北へ流れて居る。鉄線はりがねを引張った渡舟がある。余等も渡って、少し歩いて見る。多いものはブヨばかり。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)